物語学の森 Blog版 推薦状
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推薦状
2020-02-06 Thu 10:02
 この時期、縁あってこの3年の間、3人の医学部学士入学受験生のために自筆の推薦状を認めている。昨日、筆記の一次(受験者8名)、面接・小論文の二次試験(一次通過者1名)を経て、無事合格の報に接することが出来た。いずれも大卒の女性たちである。折しも、昨日の朝日新聞夕刊に、大学基準協会から、属性による不適切入試で「適合」を取り消された大学として公表された医学部である。この三年、学士入学の合格者は1名ずつ、みなさん、私の認めた「推薦状」が有効であったと喜んでくださっている。かつて、図書館やら仕事のために萩谷先生に頂いたいくつかの推薦状の文面は『本朝文粋』風の、漢文調であったが、そんなことを思い出しながら、ワープロでドラフトし、ご本人の確認、了解を得てから、次は楷書の手本を横目に複数枚を清書し、その中から一枚を選んでもらって捺印という手順である。
 さすがに三回続くと、受験生の精進もさりながら、その効用もまぐれではないような気もするが、なお自戒しつつ私も喜んでいるのである。というのも、今年の受験者は、私と6ヶ月しか誕生日が違わない、ほぼ同世代での合格であるからだ。一昨年、昨年の受験者はいずれも90年前後の生まれであり、前者は30歳を前に、アメリカでの舞台女優を辞めて秋に帰国して準備期間1年をかけて臨んだ試験であり、しかも、属性による不適切基準の中での突破だったことになる。男子の1.3倍の得点だったわけだ。中学高校は私も20年通った短大と同じ敷地にあったという御縁もあり、留学先の大学は、現内閣総理大臣や獣医学部で世間を騒がせた某学園理事長、さらに巨人軍の80年代を代表するエースが入団前に野球留学していた著名な大学であった。
 いっぽう、昨年の受験生は、東京キー局のニュースディレクターという輝かしいキャリアを捨てて臨んだ入試であって、これもまた、推薦状を書くに当たってそのキャリアをヒアリングした時には、豊富な経験や逸話に驚きつつ、まったくもって敬服する他ない、大いなる決断であったと記憶している。同じ趣旨のことを、居並ぶ面接官のみなさんも、口を揃えて「そのキャリア捨ててよいのですか」等と仰っていたと聞いている。
 さて、今年の受験者は、まこと波瀾万丈の人生を歩んだ方である。大学卒業後、代議士となった父君の私設秘書で選挙地盤を守る仕事をなさった後、病に倒れた両親の介護から、人生の折り返し点を自覚したところで医師を志したというのである。住宅ローンやら、リタイアも遠くないと、これからを思案する私には、考えも出来ない偉大な決断である。その学士試験の面接は、めったにお目にかかれない歴代医学部長が担当されるということで、その首脳達も、口を揃えてこの同世代の挑戦に、入学後の心配をしつつも、大いなる讃辞を送って下さったという。私も「この崇高な志は現代のロマンであり、人生の折り返し点を過ぎてから「ガラスの天井」を突破せんとする勇気にご理解とご支援を賜りたい」旨を認めたのであった。以前、国立大学医学部では、合格最低点を上回りながら、不合格となり、裁判でも敗訴した女性の事例もあった。それから十余年、世の中は確実に変わりつつあることを実感した出来事であった。まこと、豊かな気持ちになる報告として書きとどめておきたい。
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