物語学の森 Blog版 『源氏物語』の「琵琶黄鐘調」注解稿
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『源氏物語』の「琵琶黄鐘調」注解稿
2020-01-22 Wed 07:39
 最近、加筆した注解稿をふたつ。根拠は、以下の論文から。
ネルソン スティーヴン・G「<研究ノート>『源氏物語』における絃楽器の曲種と調絃について- 古楽譜研究者の立場から」「日本文学誌要」92巻、法政大学国文学会、2015年7月

※当該誌は編集担当・加藤昌嘉さんから御恵投賜りました。

「橋姫」巻 岩波文庫 223頁該当
○黄鐘調に調べて、世の常の撥き合はせなれど
諸註が唐楽の黄鐘調(夏の調子)とするが、琵琶黄鐘調、すなわち、笛の平調((主音E・秋の調子)で琵琶を調絃すること(『三五要録』)。雅楽の世界観は双調(春)・黄鐘調(夏)・平調(秋)・盤渉調(冬)と規定される。また漢字表記も「掻き合はせ」ではなく「撥き合はせ」。『河海抄』当該条「此黄鐘調は笛の黄鐘調歟、比巴の風香調也。比巴の黄鐘調にはあらぬか。~比巴の黄鐘調は笛の平調にあはする也」とある。「琵琶風香調」は笛で「黄鐘調」に調絃することであるから、ここでは該当しない。「宿木」三六参照。

「宿木」巻 新大系 94頁該当
○黄鐘調の撥き合はせをいとあはれに弾きなしたまへれば
琵琶黄鐘調のこと(『三五要録』)。笛で琵琶を平調に調絃することを言う。「掻き合はせ」ではなく「撥き合はせ」。唐楽の黄鐘調は夏の調子とされ、その楽曲は平安の往時、夏の宮中の行事で多く奏されたものの、秋の時節に合わない。平調(主音E)は秋の調べ。『河海抄』「橋姫」巻「比巴の黄鐘調は笛の平調にあはする也」とあるのが正鵠。「橋姫」一一参照。

参考『枕草子』集成・203段 110頁相当
 弾くものは琵琶。調べは風香調。黄鐘調。蘇合の急。鴬の囀りといふ調べ。
箏の琴いとめでたし。調べは相府蓮(想夫恋)。

 当該、風香調、黄鐘調もまた、ともに「律」旋で琵琶風香調(笛の黄鐘調(主音A)、もしくは盤渉調(主音B))、琵琶黄鐘調(笛の平調(主音E)、もしくは盤渉調(主音B))のことであり、諸注釈の見解はすべて至当ではないと言うことになる。
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