物語学の森 Blog版 宇治山、槙の尾山注解稿
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宇治山、槙の尾山注解稿
2020-01-21 Tue 07:20
槇の尾山・宇治山 20201021 (3)
左 『古典集成』 右『岩波文庫』

 このところ、中休みしていた「文学・語学」224号にも記した『源氏物語』全注釈を再開。昨年暮れ、宇治関係の地理についての問い合わせを頂いたので、下記のように加筆。この注釈の基礎稿はいうまでもなく『人物で読む源氏物語』。これに科研費でデータ整理を行い、さらに折を見て本文を見直し、注釈を加筆して今に至る。「若紫」巻は定家本に差し替える予定にしている。
 以前も掲げた『古典集成』の宇治関係図だが、宇治川右岸の槙尾山と左岸の槙の尾山があるために混乱を生じており、くわえて、山頂部で山の名を記すべきところ、八宮邸からの視界に入らないからか、山稜を大きく拡大解釈して「槙尾山」としているのは今日の研究モラルに照らしてかなり問題である。『源氏物語』の宇治山、槙の尾山の位置は、現行の流布本において、最新刊の岩波文庫のみが正鵠であるということになる。

 『源氏物語』宇治関係地図修正案

「橋姫」巻-岩波文庫215頁
○この宇治山に聖だちたる阿闍梨住みけり-

阿闍梨は八宮の仏道の師。この阿闍梨に喜撰法師を投影させているのである。『花鳥余情』「我が庵は都の巽しかぞ住む世を宇治山と人は言ふなり」(古今集、雑下、九八三、喜撰法師)を引く。なお、宇治山は、「仏徳山(ぶっとくさん)、朝日山、二子山を含む宇治川右岸の丘陵地を言い、二〇一八年、国の文化審議会が「宇治山」を名勝に、「宇治古墳群」を史跡に、それぞれ指定するよう文部科学相に答申した。世界遺産・宇治上神社などの社寺があり、宇治川をはさんで世界遺産・平等院と向き合うところであり、従来、宇治山を喜撰山の別名としてきた注釈はすべて誤りである。八宮邸(興聖寺付近)と宇治川を挟んで左岸東側に槙の尾山が見える。

「橋姫」巻-岩波文庫256頁
○あさぼらけ家路も見えず尋ね来し槙の尾山は霧こめてけり

薫から大い君への贈歌。霧が立ちこめてもいるので帰る気持ちがしないのです、という挨拶の歌。「槙の尾山」は宇治川左岸に標高百六㍍の山で歌枕。右岸にも同名の山があるが、八宮邸からは見えない。かつて巨椋池には、槇山(一説・真木山)なる小島があり、その先にある関係で槇の「尾」山というか。八宮邸が興聖寺付近、宇治川を挟んで源氏別業(平等院)、さらに東側・左手に槇の尾山となる。

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