物語学の森 Blog版 中西進の短歌(昭和24年)
FC2ブログ
中西進の短歌(昭和24年)
2019-08-19 Mon 09:42
 情熱大陸を録画視聴。図書館の如き書庫には昭和16年、中西先生の父君がまとめた句会の記録も保管されていた。たまたま、佐伯梅友先生旧蔵の短歌雑誌『槻の木』は昭和24年前後を架蔵しており、当時二十歳の中西先生と新潟の橋本達雄(19歳)の短歌も掲載されている。中西先生の短歌を復刻。平成9年5月号(都築省吾追悼)には昭和27年2月歌会の学生服の中西先生の写真も掲載されており、東大の学生時代は槻の木同人だったことがわかる。

喜び  東京 中西 進 昭和24年8月号
大いなる喜びのありはゝそはに告げむとし思へば涙あふれ來
目つぶればまなうら熱し何時よりか疲れてありしこの身なりける
声のふと耳に湧きける友のあり顔思ひ出せば逝きし友なる
夕風の窓べの我に吹き來ればあまたの書を読まむとぞ思ふ
日記展けば未來を恐るる言葉ありその日々を今は過去といふらし
二十円均一といふ本の前に入り來て我の佇みにける
夜おそく一人起き居る吾に向ひ寝言言いひたり大声に父
この朝を魚焼く匂ひたゞよひ來て寝床の中に我れの醒め居る

呟き         東京 中西 進 昭和24年9月号
ペン投げて呟いた言葉が一人居る暗い家の中にぽつんと残る
西空に沈まんとする赤き陽の我をば照らす一とときのあり
すずろに風鈴の鳴る窓の外いとかすかなる夜風のあるや
胸ぬちのうら楽しきは厨べに書をよむ少女垣間見てより
街行き「ちょうだいな」とえ言聞けばいときなき日のふとも恋しき
わが期待裏切りつゝも刻々と時刻まれて行く吾にかゝはらず
ガス管の修繕工夫来たり居て夕べの風の匂ひ持ち来る

夜遅く        東京 中西 進 昭和24年11月号
夜遅く帰り來し姉湯をあめる音の聞え來寂しその音
細く/\鳴く蟲なれば深く/\紺青の糸のごとく胸に入り來る
星空を支ふる樹影黒くして便り絶えたる友の思わる
動物に聲ありて植物に聲無きといふ事この夜身を衝く
遺るかたの無き胸ぬちの高まればこを抑へんと大き呼吸する
落つる日の反り射す陽は漣を書架に映せり深き水の面
別窓 | 生涯稽古の巻 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<<「秀頼討伐につき佐久郡郷士督促状」転写文書 | 物語学の森 Blog版 | 『古典文学の常識を疑うⅡ縦・横・斜めからかきかえる文学史』>>
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 物語学の森 Blog版 |