物語学の森 Blog版 稲本万里子著『源氏絵の系譜-平安時代から現代まで』
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稲本万里子著『源氏絵の系譜-平安時代から現代まで』
2018-09-17 Mon 05:29


 著者から拝受。ありがとうございます。「週刊朝日百科」の連載を一冊にまとめられたという。姉妹編の『すぐわかる源氏物語の絵画』(東京美術、2009年)は、読売カルチャーのサブデキストで、先週も「常夏巻」の源氏絵に源氏の調理した「鮎、いしぶし(=カジカ)」を見つけて、みなさんと楽しんだところ。

 いと暑き日、東の釣殿に出でたまひて涼みたまふ。中将の君もさぶらひたまふ。親しき殿上人あまたさぶらひて、西川よりたてまつれる鮎、近き川のいしぶしやうのもの、御前にて調じて参らす。例の大殿の君達、中将の御あたり尋ねて参りたまへり。
 「さうざうしくねぶたかりつる、折よくものしたまへるかな」
 とて、大御酒参り、氷水召して、水飯など、とりどりにさうどきつつ食ふ。

 徳川・五島本から、土佐、狩野派、さらに谷崎、橋本竈変源氏までを見開きで解説してあり、源氏絵の系譜を総覧できる。
 とくに注目したいのは、「描かれなかった女三宮」(14-15頁)。部屋の端近くの尼は「三重襷文の裳」を着けていることから、これを女三宮ではなく侍女(女房)、立ち姿の尼もまた女房として、「鈴虫巻第一段」は「女三宮」不在であるという説。 この説は『よみがえる源氏物語絵巻-全巻復元に挑む』日本放送協会、2006年の指摘が最も早い。著者はNHK名古屋「よみがえる源氏物語絵巻」取材班とあるが、実は昭和文学が専門のわたくしの知人が書いたもの。たまたま教員室でこの本の話になったとき、プロジェクトX担当の御身内の紹介で、これらの台本を書いておられた縁から、『よみがえる~』の企画に関わり、あちこちに足を運んで取材したとの話を伺った。これが2010年のこと。
 ところが、近年、この説には、「裳」があるからこそ、尼姿の女三宮なのだ、という異論が出され、説のご当人からも「精読して再考するように」との仰せを賜ったばかり。倉田実「裳を着けた尼姿の女三宮─『源氏物語絵巻』「鈴虫㈠」段から」『古代文学論叢 第二十輯  源氏物語 読みの現在研究と資料』]武蔵野書院、2015年、絵巻で見る 「平安時代の暮らし 第27回 『源氏物語』「鈴虫(一)」段の「念誦堂の女三宮」を読み解く」、これを受けての久下裕利「宇治十帖と国宝『源氏物語絵巻』」『知の遺産シリーズ⑤ 宇治十帖の新世界』武蔵野書院、2018年もある。
 稲本氏の本には、「裳」と「細長」の図もあり、これらの説を意識なさっておいでの構成かもしれないが、さらなる補説をお願いしたいところ。また、このことが議論の根拠になっていることは、『よみがえる~』の著者はご存じないかもしれないので、今度お会いしたら、お話ししたいと思っている。

 『源氏物語絵巻』詞書の金銀箔のこと




同志社女子大学・京のほんまもん講座より(20180907)。斎王代の「裳」
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