物語学の森 Blog版 「秋の調べ」はいずれの琴曲か
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「秋の調べ」はいずれの琴曲か
2018-06-11 Mon 07:42
DVD映像編集、解説、中国語訳解説、いずれもまとまる。「解説」は『日本琴學史』の抄録ながら、ひとつだけ新見を簡略に書き添えた。

 『うつほ物語』内侍のかみ巻、楼の上・上下巻、『狭衣物語』巻二には「秋の調べ」が見られる。琴曲「秋の調べ」は、李白の詩に曲を付けた「秋風詞」であろうとの類推。現存する300余曲のうち、「秋の調べ」に該当する楽曲は「秋風詞」。しかも李白の詩は恋を謳ったもので、物語の主想にも叶う。

 自身に好意を寄せる朱雀帝の弾琴の要請に、俊蔭娘(北の方、のち任内侍督)は以下のように答えて、これを固辞している。
「「秋の調べは弾く者こそあなれ」とて、
 秋風の調べて出だす松の音はたれを竜田の山と見るらむ
竜田姫か、と思ひたまへらるるかな。」       (内侍のかみ巻、前田本による)

十五夜の月の、明らかに隈なく、静かに澄みて、面白し。「心もとなし」と、あまた度嘆きのたまはすれば、まづ、習ひ初めの龍角風を、秋の調べに弾き鳴らし給ふ。音高き、清涼殿にて弾き給ひしにすぐれて、よになく面白く明らかなり。よろづの楽、笛の音をはやし、もろもろの面白き声を整へたり。譜代の声、宮たち、御方々、龍角の声をほのかに聞きしもありしかど、「まだ、かうはあらざりき」と驚き給ふ。耳に入り、心に染みて面白きこと、「かかることあらむや」と、すぐれて聞こゆ。次に、細緒を、胡笳の調べにて一つ弾き給ふに、色々に、霰しばしば降り、雲たちまちに出で来、星騒ぎ、空の気色、恐ろしげにはあらで、めづらかなる雲立ち渡る。廂に居給へる人々、狭くて、人気に暑かはしくおぼえ給へる、たちまちに涼しく、心地頼もしく、命延び、世の中にめでたからむ栄えを集めて見聞かむやうなり。同じ調べながら、遥かに澄み上りたる声、心細くあはれにて、上は空を響かし、下は地の底を揺るがす。    (楼の上・下巻 前田家本による)

また、狭衣大将の詠歌は以下の如くである。
しのぶるを音に立てよとや今宵さは秋の調べの空のかぎりに   (内閣文庫本による)

 入内を控える源氏の宮に未練を残す狭衣大将は、源氏の宮の弾く琴(きむ)の音を聞きつけ、参上する。弾きさした琴(きむ)を渡され、忍ぶ思いを歌に詠むところがこの「曲想」に重なる。なお、唐楽「秋風楽」との関係は不明。『源氏物語音楽用語事典

李祥霆 『秋風詞』
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