物語学の森 Blog版 板倉功氏「『源氏物語』越佐の系譜ー底本『大島本』は『佐渡本』」について
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板倉功氏「『源氏物語』越佐の系譜ー底本『大島本』は『佐渡本』」について
2017-09-28 Thu 09:00
板倉功論文

 佐々木孝浩氏著『日本古典書誌学論』に関する高田信敬氏の書評「国語と国文学」(2017年10月号)は極めて重要な指摘と知見に富む論攷。ただし、大島本の伝来に関して以下のようにある。

  なお伝来に関して(241頁)、佐渡島の所有者が少しわかることを付言する(注9)

(注9) 佐渡島にて修理ヤツ女史(1936年没)より剛安寺に寄贈された経緯がある(「『源氏物語』古典覚え書き」179)

 調べてみると、この情報が平成14年(2002)にもたらされたものであることが判明。この年以後の文献であることが必須条件となると、板倉功著『源氏物語覚書 改訂版』新発田、1、2003年8月、2、2003年10月、2冊のうちの、179頁にこの記述があることになる。これは国立国会図書館、新潟県立図書館、鶴見大学図書館にしか所蔵が確認されないもの。ところが、板倉功氏には、再度、これをまとめた論攷のあることが判明。

 板倉功「『源氏物語』越佐の系譜ー底本『大島本』は『佐渡本』」「郷土新潟」46号、新潟郷土史研究会、2006年3月。

 この号を購入して精読。すると、以上の「新情報」は吉井本郷(旧金井町)剛安寺住職による先代証言のみが論拠であって、高木文に大島本を売りに来た田中とみとの関係、はやく父と兄を喪い、母の手で育てられ、苦学した裁縫教師・修理ヤツ(1853-1936)が、『源氏物語』をどこから、どのように入手したのか、これらは一切不明であり、確定条件は認められない。
 現在、佐渡にある『源氏物語』は二セットで、ひとつは市立図書館蔵の堀家本(佐渡市指定 有形文化財)と、もうひとつは松栄家本。堀家本は所有者・堀治郎氏没後、ただちにゆかりの家から旧金井町に寄贈されており、剛安寺経由の伝来は考えられない。ところが後者の松栄家本(松栄家は回船業、佐渡汽船オーナー。明治初年、鈴木重嶺により佐藤から改姓)は、当主の証言として、先代・松栄俊三(1890ー1984)の入手と本論文にあることから、この本こそが、板倉論文にいう『源氏物語』の可能性が極めて高いように思われる。
 いっぽう、『光源氏物語傳來史』で、大島本所有者と推定した貝塚田中家の来歴は以下の通り。吉見家滅亡のあと、毛利家の所蔵となり、明治半ばに、勝海舟、鈴木重嶺の仲介で佐渡に渡ったと考えるのが卑説。一昨年秋、毛利家研究の広島県立大学の秋山伸隆先生に窺ったところ、江戸時代の毛利家典籍は一切流出した形跡はない旨を御教示頂き、近代に至って大島本の越左を裏付ける証言であるように思われるので付言する。

田中穂積

『佐渡を創った百人』金井町、1987年。出典・佐渡人名録

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