物語学の森 Blog版 『うつほ物語』から『うつほ草紙』へ(抄録)
『うつほ物語』から『うつほ草紙』へ(抄録)
2017-08-11 Fri 06:50
うつほ草紙 小学館文庫、2003年3月
 
 今年は奇しくも『うつほ物語』再読の年。今抱えている原稿に加え、9月16日には青山学院女子短期大学同窓会講演「笑わぬかぐや姫と笑われる『うつほ物語』三奇人たち」、そして十数年ぶりの輪読会も担当予定。
 そこで十余年前の小文を読み返したところ、なかなか頑張っていました。以下、引用抄録。 

 巻末エッセイ 『うつほ物語』から『うつほ草紙』へ(抄録)

 さて、本書『うつほ草紙』は、主人公の名を清原俊華牙と言う。これに乳母子で琴職人の春音を伴い、遣唐副使として唐へ船出する。しかしそれは清原家を滅亡させんがための藤原氏の陰謀なのであった。嵐で難破し、海を漂う俊華牙と春音は、商人のセライ・ナジャ(後の馮若芳)に助けられ、波斯の都バグダードへ向かう。しかし彼は宮廷内の抗争に巻き込まれた上に、「愛別離苦」という木の呪いを受けて春音を喪い、傷心のまま、十三年の後、多くの宝物・文物とともに帰国を果たす。俊華牙は一女・細緒(原作には名は記されず、琴の名を転用)を儲け、四四歳の生涯を閉じる。遺された娘はあやにくな運命に翻弄'され、俊華牙を波斯国に追いやった藤原氏の嫡男・兼雅の子を宿す。運命の子の名、それが藤原仲忠であった。
 諏訪緑の物語世界は、代表作『玄奘西域記』にも一買して「少年の自分探しの物語」を主題とするようである。運命に翻弄される少年たちが、西方への旅を通して世界を知り、人を愛する切なさを知る。邂逅と離別を経験しつつ、自我に日覚めてゆく物語なのである。 このような読後の爽快感・清涼感をもたらしてくれる、現代に転生した『うつほ』の草紙を、もし清原氏の末裔である清少納言や、藤原氏の末裔である紫式部が読んだなら、「永遠の青春性」が主題のこの物語を何と評したことであろうか。
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