物語学の森 Blog版 『源氏物語』主要脱文・本文異同稿、続編その1
『源氏物語』主要脱文・本文異同稿、続編その1
2016-09-26 Mon 07:12
 正編その1から間が空きました。今回は「橋姫」。明融本と大島本は、親子関係ではないが、本文系譜上、共通宗本で繋がる関係にあることが確実な例。新編全集は、二箇所とも他本で補って校訂、新大系は脚注に断る。全書は底本のまま。
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橋姫 ①
新編全集 120-09 明融本
さすがに広くおもしろき宮の、池、山などのけしきばかり昔に変らでいといたう荒れまさるを、つれづれとながめたまふ。家司などもむねむねしき人もな▽かりければ、とり繕ふ人もな▽きままに、草青やかに茂り、軒のしのぶぞ所得顔に青みわたれる。

新大系 300-11 大島本
 さすがに広くおもしろき宮の、池、山などのけしきばかりむかしに変はらで、いといたう荒れまさるを、つれづれとながめ給ふ。家司なども、むねむねしき人もな▼きままに、草青やかにしげり、軒のしのぶぞ所得顔に青みわたれる。
註一七 青表紙他本「なかりけれはとりつくろふ人もなきままに」。
池田全書  211-1 大島本
 さすがに広くおもしろき宮の、池、山などの景色ばかり昔に変はらで、いといたう荒れまさるを、つれづれとながめ給ふ。家司なども、むねむねしき人もな▼きままに、草青やかに繁り、軒のしのぶぞ所え顔に青みわたれる。
註三 しつかりとした人もゐないままに。 
明融
―さすかにひろくおもしろき宮のいけ山なとの 五オモテ/けしきはかりむかしにかはらていといたうあ/れまさるをつれ/\となかめたまふけいしな/ともむね/\しき人もな▼きまゝに草あを/やかにしけりのきのしのふそところえかほに/あをみわたれるおり/\につけたるはなもみ/ちのいろをもかをもおなし心にみはやし給/しにこそ」五ウラ

大島
―さすかに/ひろくおもしろき宮のいけ山なとのけし/きはかりむかしにかはらていといたうあれまさる/をつれ/\となかめ給ふけいしなともむね/むねしき人もな▼きまゝに草あをや」四オモテ/かにしけり軒のしのふそ所えかほにあを/みわたれるおり/\につけたる花もみちの色/をもかをもおなし心に見はやし給ひし/にこそ」四ウラ

1509–09 池田・肖柏・日大三条西・穂久迩・曼珠院・三条西証・大正/高松宮・横山・陽明・国冬・麦生・阿里莫
―むね/\しき人もなかりけれはとりつくろふ
 保坂
―はか/\しきもなかりけれはとりつくろふ

橋姫 ②
新編全集146-07 明融本

かの御上とて聞こしめし伝ふることもはべらん。過ぎたまひていくばくも隔たらぬ心地のみしはべる。そのをりの悲しさも、まだ袖のかわくをりはべらず思うたまへらるるを、▽手を折りて数へはべれば、▽かくおとなしくならせたまひにける御齢のほども夢のやうになん。かの故権大納言の御乳母にはべりしは弁が母になむはべりし。

新大系 319-13  大島本
かの御上とて聞こしめし伝ふる事も侍らむ。過ぎ給て、いくばくも隔たらぬ心ちのみし侍。そのおりのかなしさも、まだ袖のかはくおり侍らず思ふたまへらるるを、▼かくおとなしくならせ給にける御齢のほども夢のやうになん。かの権大納言の御乳母に侍しは、弁が母になむ侍し。

註三四(あなたが)このように立派に成人なさったその年齢からしても、まるで夢のようで。柏木巻によれば、柏木の死は薫の誕生の直後。弁は暗に二者の関係の深さをいう。青表紙他の本「かく」の上に「てをゝりてかそへ侍れは」。 
池田全書 231-7  大島本
かの御上とて聞召し伝ふる事も侍らむ。すぎ給ひて、いくばくも隔たらぬ心地のみし侍る。その折の悲しさも、まだ袖のかはく折侍らず思ふ給へらるるを、▼かくおとなしくならせ給にける御齢の程も、夢のやうになむ。かの権大納言の御乳母に侍りしは、弁が母になむ侍りし。
明融
―かの御うへとてきこしめし/つたふる事も侍らんすきたまひていくはくもへ/たゝらぬ心ちのみし侍そのおりのかなしさも/またそてのかはくをり侍らすおもふたまへ/らるゝを▽(朱傍書〈手ヲ折てカソヘ侍レハ〉)▽かくおとなしくならせ給にける御よは/ひのほともゆめのやうになんかの権大納言」三一ウラ
大島
―かの御うへとてきこしめしつたふる事も/侍らむすき給ていくはくもへたゝらぬ/心ちのみし侍そのおりのかなしさもまた/袖のかはくおり侍らすおもふたまへらるゝ/を▼かくおとなしくならせ給にける御よ」二八ウラ/はひのほとも夢のやうになんかの権大納言

1528–04 池田・肖柏・日大三条西・穂久迩・曼珠院・三条西証本・大正/高松宮・横山・保坂・国冬・麦生・阿里莫
―てをゝりてかそへ侍れはかく
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