物語学の森 Blog版 『狭衣物語』引用漢籍註疏(稿)巻4補遺 
『狭衣物語』引用漢籍註疏(稿)巻4補遺 
2016-09-01 Thu 09:03
 以前、発表した二本の論文に関して大谷雅夫氏の新見が提出されていたので心覚えに補遺を加えました。典拠漢籍を規準に本文批判をしてみると、巻四は、内閣文庫本や版本等の流布本が、典拠本文を正確に伝えていることが判ります。

単独論文「『狭衣最秘鈔』-『狭衣物語』引用漢籍註疏稿」平安文学論究会編『講座 平安文学論究/第十六輯/特集・平安末期物語及び中世王朝物語』 風間書房・2002.05.15刊行
共編「平安後期物語引用漢籍総覧」『懐風藻研究09』日中比較文学研究会・2002.05.20 刊行  

---------------------
巻四
狭衣大将、斎院で蹴鞠に興ずる
「行履珠歸つて跡半ば深し」としのびやかに口ずさみたまひて、高欄にをしかかりたまへるまみ、けしき、御声などは、


「かうりたまかへつてあとなか(る)はふかし」と忍びやかに口ずさみたまひて、高欄にをしかかりたまへるまみ・けしき・御声などは (全書下一七一10、集成下二一五11)

全書註十一 漢詩の一句を朗詠したらしいとだけは判るが、出典未詳 補注三十三 有朋・新釈も「未詳・不詳」とする。下紐には「かぶり歟。愚推」とある。校異を示すと板本は「かうりたまかへつてあとなるはふかし」、板本イには「かうりたまかへり(・)てあとなく(・)はふかし」、蓮空本は「からふりたまかへりてあとなからふかし」、九條本は「たをり給けるをあとなうはずかし」である。
集成註十六 漢詩を朗吟したものであろうが、意不通。伝為家本「かふり給はりてあとなるはふかし…」、為定本は空白。「桃李先散りて後なるは深し」と読む説がある。

※「二 暮春於右尚書菅中丞亭,同賦閑庭花自落 一首 以心為韻。
 送春花下一相尋 自落閑庭助醉吟 脆是天為人散牠 飄非風意鳥馴林
 遊塵紅定蹊初合 行履珠歸跡半深 徒見多年開復落 今年初識有芳心 
 江以言」『本朝麗藻』上巻、大江以言 
●大谷雅夫「道をうづむ花」(『歌と詩のあいだ』岩波書店、2008 年)

※「桃李先散りて後なるは深し」と忍びやかに口ずさみたまひて、高欄にをしかかりたまへるまみ・けしき・御声などは   (大系・三六〇11、新編全集下二三八10)

大系註10…出所不明… 補注316 底本・平出本・流布本(承応板本)「かうりたまかへりてあとなるはふかし」、伝為家本「かふり給はりてあとなるはふかし」近衛一本「かうわたたまかへりてあとなかはふかし」…「桃李」と考える。…。 
新編全集註五 漢詩句の引用と思われるが、出所不明。なおこの部分、底本、同系内閣文庫本・流布本(承応版本)には「かうりたまかへりてあとなるはふかし」(流布本系古活字本「り」→「つ」)とあり意味が通じない。誤写の想定を仮定した説に拠って意改本文を提示した。諸本間の異同も大きい。 ..
.
※為家本「はなのいたふちりかふをみ給はりて、かふり給はりてあとなかいふかしとしのひやかにくちすさひ給て」359下段-02~04
※蓮空本「からふりたまかへりてあとなからふかし」(47頁)
豊島秀範編『狭衣物語「蓮空本」(巻四)の本文と注釈』注二一「漢詩文の引用がありそうだが、出典不明。…」(神田)

別窓 | 右書左琴の巻 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<<朔日頃の夕附夜-長月 | 物語学の森 Blog版 | 大河ドラマの中の『源氏供養』>>
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 物語学の森 Blog版 |