物語学の森 Blog版 早稲田大学図書館蔵・伝一条兼良筆「桐壺」巻断簡二葉
早稲田大学図書館蔵・伝一条兼良筆「桐壺」巻断簡二葉
2016-05-23 Mon 05:21
 早稲田で中古文学会大会。井深大の名を冠した国際会議場だけあって、音響は今までで最も良かった気がします。九曜文庫の展観は、伝一条兼良筆「桐壺」巻断簡二葉に再会。数年前の展観にも陳列されていましたが、現在はかなり鮮明な画像も提供されており、本文・書き入れ注記はこれで確認できます。都電でご一緒したK先生の御教示に依れば、このうちの一葉は九曜文庫所蔵品ではなく、図書館で購入した由。本文は朱の青表紙本の校合があるとのこと。『古筆学大成』にも掲載されていた古筆はこのツレで、「奥書」によれば「兼良」自筆であること、などなど、多くの知見を得ました。なお、『源氏物語に関する展観書目録』(東京帝国大学文学部国文学研究室編、昭和7年、岩波書店)の口絵にも、一条兼良筆・「紅葉賀」巻(文君なといひけんむかしの人も・かくやおかしかりけんとみみとまりたまふ)が掲載されており、『今こそ知りたい池田亀鑑と源氏物語』第二集・新典社、2013年に転載されています。

 大島本『源氏物語』の奥書によると曼珠院良鎮が父・兼良所持の河内本で校合し、注記を書き入れしたとあるから、その関連をざっと調べてみると、大島本の該当個所には書き入れは少なく、むしろ明融本の書き入れに一致するものが多く、頭の中で整理がつかなくなりつつありますが、ともあれ覚え書き。

大-大島本にあり
明-明融本にあり

明<朱合点> 夕殿蛍飛思悄然/秋灯挑尽未能眠(白氏文集「長恨歌」)
大・明<朱合点> たますたれあくるもしらすねし物を/ゆめにも見しと思ひかけきや(伊勢集)
明<朱合点> 春宵苦短日高起/従此君王不早朝(白氏文集「長恨歌」)

 以下、覚え書きとして引用させて頂きます。

四 源氏物語の断簡

 源氏物語の切では、最近時に収蔵された伝一条兼良筆源氏物語断簡一葉(未装)も合わせて紹介しておきたい。『思文閣墨蹟資料目録』別冊二一号(二〇〇〇年三月)の一七五所掲のもので、目録には「加賀前田家旧蔵」と記載されていた。ただし現品自体には前田家旧蔵を徴証する要素は見当たらない。現在整理中のため請求番号は付されていない。縦二六・〇糎、横一九・〇糎、本文字高二三・〇糎、料紙は斐楮交漉紙、一面八行分である。極札は「一條殿兼良公琴山(本家印)」(裏面剥離)とあり、切裏左上に貼付されている。切裏には右上に「子四十一兼良/二十八枚ノ内」(朱筆)、右下に「六十二番/兼良公/二十九枚ノ内」(墨書)の小紙片を貼付する。
 桐壺巻の断簡である。朱墨による種々の書き入れがあるが、河内本系の本文を青表紙本系の本文校合し朱訂している点が注目されるだろう。なお、本断簡の直前の一面が石川県立美術館蔵手鑑に収められている(三六)。『古筆学大成』第二三巻(一九九二年六月)および『古筆手鑑大成』第一三巻(一九九三年九月 角川書店)参照。また同手鑑は金沢の豪商山川家収集コレクションの一つで、それ以前の伝来は一切不明とのことであるが、本学所蔵断簡が「加賀前田家旧蔵」と伝承されることと、その直前のツレが金沢に所在することとの間には、何かしらの連関が存在するのかも知れない。『古筆学大成』の解説によれば、個人蔵手鑑に奥書部分の断簡が存し、その花押を検証するに一条兼良の真筆と認められるものという。
    兼築信行先生「早稲田大学図書館所蔵の古筆切資料」 「早稲田大学図書館紀要」 48号 2001年3月 より抜粋
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