物語学の森 Blog版 旧訳・谷崎『源氏』「月報」から。
旧訳・谷崎『源氏』「月報」から。
2016-05-14 Sat 08:02
 旧訳・谷崎『源氏』「月報」(1939年(昭和14年)1月23日-1941年(昭和16年)7月25日1916)は、『源氏物語研究』と題して13号附載されましたが、さまざまな情報が得られます。特に11.13号に「『校異源氏物語』刊行に就いて」は注目すべき文献のひとつ。

 弊社は谷崎潤一郎氏によって『源氏物語』の口語譯を完成し世の視聰を蒐めつつあるが、今更に之に次ぐ大事業として校異源氏物語の刊行を江湖に發表する。
 …又数十萬の源氏の各語彙を、自由に検索することの出来る大索引が附せられたことは、國文学研究の新しい發展のために貢献するところ甚大であると信ずるのである。

 これは口頭だったか、書き残しておられるのか、さらに調べてみますが、索引の刊行を見送ろうとする池田亀鑑と、刊行を迫るお弟子さん達で議論になったことがあったと萩谷先生が講義中に仰っていました。池田亀鑑の見送り理由は、

○不審箇所の残っていること
○せっかく苦心して作ったものだから、まずは自分が大いに活用して論文化してから公刊したい。

とのことだったようで、後者の理由を批判する内容だったと記憶します。池田亀鑑の『源氏物語』の語彙に関して、東大の講義録にはのべ18ヶ月これを講じていたようです(「國語と國文学」昭和33年2月号-「池田亀鑑博士年譜・附著書要目及び講義題目」)。

○昭和17年(4 月-9月) 中古國文学環境論 国文学講読(日記文学) 国文学演習(古代歌人の研究)
○昭和17年(10 月-3月) 中古國文学語彙の研究 国文学講読(物語文学) 国文学演習(文学史の問題)
○昭和18年(4月ー 9月)  中古國文学語彙論 国文学講読(宮廷日記) 国文学演習(古今集序の研究)
○昭和19年(10月-3月)  草仮名解読 みやびの研究
○昭和20年(4月- 9月)  國文学講読 紫式部日記
○昭和20年(10月-3月) 中古國文学と支那文学
○昭和21年         古代小説の構想  

 もうひとつ、11号所収の「塩田良平「源氏物語と明治文学」」も面白い。明治の文豪が古典に親しむようになったのは、「板本より活字本に慣れてきた若い作家等」に広く迎えられた「博文館の日本文学全書(23年)が發行され出してからではないかと思はれる」とあり、「国木田独歩が『竹取物語』を読みながら幾度か巻を蔽うて泣き、「『竹取物語』を讀みて泣かざるのもの未だヒュマニティーと人世とを語るにたらず。」と如何にも多感な青年らしい表現をしてゐる」とあり、『源氏物語』は尾崎紅葉書入本を紹介し、「紅葉」は、「源氏の修辞や趣向方面に心を惹かれていること、紅葉の「多情多恨」は源氏の桐壺を現代風に長編化したもので、その本質はもののあはれであると言われてゐることである」ともある。
 博文館の「日本文学全書」(1890-1891)は48件がヒットします。
○第1編・野口竹次郎編『竹取物語、 伊勢物語、 紫式部日記、住吉物語、徒然草』
○第8.9.10.11.12編・野口竹次郎編『源氏物語』
○上・・下 落合直文, 小中村義象, 萩野由之校訂『栄花物語』
 
※尾崎紅葉  (1968-1903)
※国木田独歩(1871-1908)

 このことも、なお、調べてみます。
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