物語学の森 Blog版 『湖月抄』の300年
『湖月抄』の300年
2016-04-30 Sat 08:56
 先日、書庫から掘り出した雑誌の一つに『国語展望』53巻(尚学図書、1979年11月)がありました。

〈座談会〉「源氏物語」をめぐって/阿部秋生・小町谷照彦・野村精一・柳井滋

同社から刊行された『鑑賞 日本の古典』の第一回配本『源氏物語』の校注・執筆者の座談会。刊行から37年、三人が鬼籍に入られており、戦後の源氏学をリードした先学の貴重な証言となっています。座談会冒頭「『源氏物語』との出会い」は、『源氏物語』をどの本で読んだか、誰に習ったかが自己紹介的に述べられています。参加者の年齢順に並べてまとめてみます。

○阿部秋生(1910-1999) 有川武彦『増註源氏物語湖月抄』昭和3年(1928) /旧制第一高校/山岸徳平
○野村精一(1929-) 猪熊夏樹『訂正増註源氏物語』大阪積善館、明治23.24年(1890.1891) 旧制第一高校/阿部秋生
○柳井滋(1930-2008) 吉澤義則『対校源氏物語新釈』平凡社、1937年-1939年 /旧制第一高校
○小町谷照彦(1936-2014) 池田亀鑑『日本古典全書 源氏物語』朝日新聞社、1949-1954年/伊那北高校/代田敬一郎

これにくわえて、
○塚本哲三『源氏物語』有朋堂文庫・大正14年(1914)
○正宗敦夫編纂校訂『源氏物語』日本古典全集刊行会・1937年
○金子元臣『定本源氏物語新解』明治書院、1925-1930年/『湖月抄』本文に河内本(耕雲本)を校合

等の叢書が参照されていたようです。また野村先生の発言の中に、藤岡作太郎( 1870-1910)も積善館版『湖月抄』で読んでいたとの証言もありました。

 谷崎潤一郎(1986-1965)の旧訳も『湖月抄』を底本に『対校源氏物語新釈』を参照したことが知られており、アーサー・ウェイリー(Arthur Waley /1889-1966)の読んだ『源氏物語』の本文もまた『湖月抄』。

 先の座談会でも阿部発言に、「いつごろまでかはよくわからないけれども(昭和)三十数年ぐらいまでは『湖月抄』で行ったんじゃないかな。というのは『校異源氏』はできたけれども、比べてみると、『源氏物語』とあんまり違ってないじゃないか(笑)青表紙本は」

  北村季吟(1625-1705)の『源氏物語湖月抄』(1673年)は、江戸から昭和の『源氏物語』約300年を語る際に、欠かせないテクストのようです。



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