物語学の森 Blog版 『枕草子』諸本関係図
『枕草子』諸本関係図
2016-04-15 Fri 07:05
枕草子の成立過程

  明日の報告の資料データから。新見というより、従来説の微調整レベルかもしれません。ただし、最近の『枕草子』関係の論文は、以下のような前提すら、まったく読まれていないものも多いので、再確認の意味で引用します。三巻本校訂本文で『枕草子』を論ずるときでも、それは平安時代の本文ではない可能性が高いことを前提としておきましょう。 

四 現存伝本四系統と三巻本の卓越

池田(亀鑑)博士が、当初は三巻本の優位性を力説しながら、晩年には、三巻本における各章段内の主題・構成の把握の困難さから、『枕草子』の原本形態は類纂本であり、それが錯簡・乱丁を生じて、後人が恣にこれを整理し、再編集したがために、雑纂形態が発生し、そこに三巻本に見られるが如き、各章段間の遊離本文の竄入が発生したのであると論ぜられるに至ったのは(至文堂『全講枕草子』要説・補説)、はなはだ遺憾であり、今日では、賛同する者は少なくなった。

本云 往事所持之荒本紛失年久、更借出一両之本令書留之、依無證本不散不審。
 但管見之所及勘合舊記等注付時代年月等、是亦謬案歟。
  安貞二年三月   耄及愚翁 在判

 定家という人の性格が、文芸評論の面ではきわめて自信過剰な傾向を示しているので、定家が書写した古典作品には、例えば『土佐日記』の如く、本文に恣意的な改訂の加わることが多く、三巻本『枕草子』にもその点が懸念されるのであるが、その奥書を信ずる限り、定家が灑筆したのではなく、何びとかに命じて書写せしめたというのであるから、定家の嘱命を蒙った人物は、おそらく謹慎忠実に書写を遂げたものと思われる。ゆえに、定家本にありがちな恣意的改訂という点では難を逃れるし、なおかつ、定家自身、かつて所持していた『枕草子』の一本を「荒本」と認めているのであるから、それに対して、改めて他家の所蔵本を借り出して書写した「一両之本」とは、その荒本に比すれば、遙かに善本と認めていたに違いない。

…そして、定家がかつて所持して紛失した「荒本」とは、類想的章段・随想的章段を主として、殆ど回想的章段を保有することのない原初『枕草子』の別本で、正に広本『枕草子』に対する狭本というべく、あるいは、想定し得る「古堺本」そのものではなかったかとさえ思われる。 
 
萩谷朴「解説 清少納言枕草子-人と作品」『新潮日本古典集成 枕草子』上巻、新潮社、1977年
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