物語学の森 Blog版 畠山大二郎著 『平安朝の文学と装束』
畠山大二郎著 『平安朝の文学と装束』
2016-03-31 Thu 04:59



 畠山大二郎さんから、学位論文の公刊となる『平安朝の文学と装束』拝受。ありがとうございました。噂の「装束生地見本」は、手触りや質感のみならず、本文中の自説の補強として、圧倒的な説得力を持っています。カバーは洋書風に英文を黒で装い、章立てのデザインにも凝った瀟洒な一冊。さっそく、永久保存に堪え得るよう、本体、生地見本共に透明カバーを掛けました。本文中の写真、図版も豊富、撮影は杉並に寝殿造の面影を宿す大宮八幡宮、後輩のモデルさんたちは平安朝スタイル復原のために眉まで剃って臨んでおられます。

 本文中に描き込まれた装束の意味を、丹念に解き明かし、人物造型に重要な意味を持つことを証明するための図版と生地見本が有効。『紫式部日記』の装束については、生地見本、写真図版と本文を何度も往還しながら読み進め、その実態がイメージとして浮かび上がりました。装束に関する本は何冊か読みましたが、本書の説得力に優る本はありません。畠山さんの論文のひとつは偶然の機会から、真剣勝負で精読し、卑見を申し上げたことがありました。特に同時代史料の宝庫、『歌合日記』等の文献は初出論文からさらに枝分かれして、他の章段に生かされており、博士論文の内容構成を支えている重要な論拠として結実していることを知ることが出来ました。

 また、こうした充実した専門書を若い人が出せるのは、「課程博士論文出版助成金」制度の國學院大学大学院の全面バックアップも大きい。大学院が本気で研究者を売り出そうという気概と、博士論文の充実とがマッチした結果であると思います。博士論文提出には内規として高いハードルがあるとのことですが、その条件をクリアしての学位ですから、他大学にはなかなか真似できないところ。
 前日、畠山さんも寄稿した『物語文学論究』14号(2016年3月14日刊行)國學院大學物語文学研究会も拝受しました。気鋭の研究者を輩出した45年を誇る名門研究会、当然の事ながら、ここでも討議が、畠山さんを鍛え、前人未発の方向性をもたらしたことが分かります。ただし、論文引用が、同学、研究会同人に偏りがちなことと、叢書の校訂本文に全面的に依拠していて、異文の参照が乏しいことは、新説が続出してる本書にとって、むしろ障害となるところもあるのではないか、と気になりましたので、ここに記します。もちろん、『紫式部日記』論文では、校訂本文の読点にすらこだわっておられ、丁寧な目配りのあることも確かではあります。

 その昔、学部生時代から『うつほ物語』の研究会に参加された畠山さん、当時はパンク系の風貌、「大学院入試の面接にピアスは困る」みたいなことをご指導の先生が仰っていましたが、そのポリシーは、平安時代の服飾文学と言う独自の研究領域の開拓に繋がったと言うことでしょう(面接時、耳に光るものは無かったと、新年度あけに窺いました)。
 御上梓と新たなる出発、おめでとうございます。

 


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