物語学の森 Blog版 池田亀鑑「古典解説シリーズ 14 枕草子」アテネ文庫
池田亀鑑「古典解説シリーズ 14 枕草子」アテネ文庫
2016-03-23 Wed 08:44
 「古典解説シリーズ 14 枕草子」(弘文堂、アテネ文庫、1955年)を入手。
 先日、書き留めた、「五月ばかりなどに、山里にありく」の段で池田亀鑑が紹介していた異文は「かかへたる」でした(訂正済み)。

 五月ばかりなどに、山里にありく、いとをかし。草葉も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとただざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などの歩むに、走りあがりたる、いとをかし。
 左右にある垣にある、ものの枝などに、車のやかたなどにさし入るを、急ぎてとらへて、折らんとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いと口惜しけれ。蓬の、車に押しおしひしがれたりけるに、輪のまはりたるに、近ううちかかかへたるもをかし。(三巻本二〇八段)


 「かかへたる」に関して、「ほのかに香のただよつたのも」と解釈しています。これは、前田家本、堺本、さらに能因本の「近うかけたるも、香のかかへたるも、いとをかし」が念頭にあったもの。今日の本文批判のように、他系統の本文を混ぜないのではなく、諸本本文を統合する方法だということになります。『枕草子』の場合、三巻本本文だけで読むことは極めて困難。校合の匙加減をどうするか、その一点に、戦後の『枕草子』研究史が存在したとも言えるわけです。
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