物語学の森 Blog版 上原石上流泉と『源氏物語』
上原石上流泉と『源氏物語』
2015-09-09 Wed 08:47


 編修を担当された加藤さんから『日本文学誌要』92号を頂きました。ありがとうございます。

『源氏物語』における絃楽器の曲種と調絃について―古楽譜研究者の立場から― (スティーヴン・G・ネルソン)

 七絃琴も、琵琶も、箏も、楽理上は合奏可能となると言う。パウロの回心よろしく、目から鱗の落ちる思いがしました。
 『仁智要録』『三五要録』から復原されたこの曲は、やはり『源氏物語』の世界に響いていたようです。

 『源氏物語』「宿木」巻。
 菊の、まだよく移ろひ果てで、わざとつくろひたてさせたまへるは、なかなか遅きに、いかなる一本にかあらむ、いと見所ありて移ろひたるを、取り分きて折らせたまひて、
 「花の中に偏に」
 と誦じたまひて、
 「なにがしの皇子の、花めでたる夕べぞかし。いにしへ、天人の翔りて、琵琶の手教へけるは。何事も浅くなりにたる世は、もの憂しや
 とて、御琴さし置きたまふを、口惜しと思して、
 「心こそ浅くもあらめ、昔を伝へたらむことさへは、などてかさしも」
 とて、おぼつかなき手などをゆかしげに思したれば、
 「さらば、独り琴はさうざうしきに、さしいらへしたまへかし」
 とて、人召して、箏の御琴とり寄せさせて、弾かせたてまつりたまへど、
 「昔こそ、まねぶ人もものしたまひしか、はかばかしく弾きもとめずなりにしものを」
 と、つつましげにて手も触れたまはねば、
 「かばかりのことも、隔てたまへるこそ心憂けれ。このころ、見るわたり、まだいと心解くべきほどにもあらねど、かたなりなる初事をも隠さずこそあれ。すべて女は、やはらかに心うつくしきなむよきこととこそ、その中納言も定むめりしか。かの君に、はた、かくもつつみたまはじ。こよなき御仲なめれば」
 など、まめやかに怨みられてぞ、うち嘆きてすこし調べたまふ。ゆるびたりければ、盤渉調に合はせたまふ。掻き合はせなど、爪音けをかしげに聞こゆ。「伊勢の海」謡ひたまふ御声のあてにをかしきを、女房も、物のうしろに近づき参りて、笑み広ごりてゐたり。
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