物語学の森 Blog版 大島本『源氏物語』「紅葉賀」巻和歌の「うとまれ『をか』ぬ」書入注記
大島本『源氏物語』「紅葉賀」巻和歌の「うとまれ『をか』ぬ」書入注記
2015-07-15 Wed 06:10
 源氏物語講座は、紅葉賀巻。和歌解釈は従来から説の分かれるところで、工藤重矩先生から「ぬ」完了・打ち消し両義説に関してご批判を頂戴した拙論もありました。研究史は頭に入っているので、大島本『源氏物語』DVD版で再確認してみると、例の「うとまれーぬ」の本文書き入れ注記に「うとまれ『をか』ぬ」の「心也」と含意で説いています。「れ」を詠者の自発とすると、自動詞「をかぬ」ではなく他動詞「をけぬ」のほうがより意味をとりやすい。解釈は「疎み置けない大和撫子(若君)」。

 歌ことば「うとまれぬ」の先蹤は以下の和歌が知られます。これも含意で訳すことは可能。
 ○古今和歌集・雑体・1032「おもへども 猶うとまれぬ 春霞 かからぬ山の あらじとおもへば 〈よみ人しらず〉」
 ○伊勢物語・43段 「ほとゝぎす ながなくさとの あまたあれば 猶うとまれぬ 思ふものから」 

 いずれ、また考えてみたいと思います。 

 源氏 新古今よそへつヽみれと露たになくさますいかにかすへきとこ夏の花
  露けさまさるなてしこの花はなに
  さかなんとおもひたまへしも・かひなきよに
我やとにまきしなてしこいつしかも花にさかなんよそへてもみん

  侍りけれはとありさ ぬへきひまにや
  ありけむ・御らむせさせて・たゝちりは
  かり・この花ひらにときこゆるを・わか御
  心にも・ものいとあはれにおほししらるゝ
  ほとにて
 藤ツホ 返し
   袖ぬるゝ露のゆかりとおもふにも 」20オ
        をかぬノ心也
 
 猶うとまれぬやまとなてしことはかり
  ほのかに・かきさしたるやうなるを・よろこひ
  なからたてまつれる・れいの事なれは・
  しるしあらしかしと・くつをれてなかめ
  ふし給へるに・むねうちさはきて・いみ
  しくうれしきにも・なみたおちぬ・  」20ウ

新古今集1494・義孝集73-花鳥余情/休聞抄・孟津抄・紹巴抄・岷江入楚に典拠として見える
古今六帖3618-源氏釈・奥入/異本紫明抄・紫明抄・河海抄に典拠として見える
※ この書き入れ注記は、一条兼良奥書本をもとに、吉見正頼の監督下、家人らを動員して作成されたと考えています。
 
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