物語学の森 Blog版 『廻国雑記』の武蔵野『伊勢物語』伝承。
『廻国雑記』の武蔵野『伊勢物語』伝承。
2015-03-28 Sat 06:59
 道興准后の『廻国雑記』によれば、少なくとも四回武蔵野に立ち寄ったことになっています。ここにはおなじみの地名と伝承が記されてあり、15、16世紀のこの地の文化を窺うことが出来ます。ともあれ、『伊勢物語』伝承もまた、文明19年( 1487)五月頃の、かなり早いときのものであることは特筆されるでしょう。

 河越といへる所にいたり、最勝院といふ山伏の所に一両夜宿りて、
 
 限りあれば けふ分つくす 武蔵野の さかひもしろき 河越の里

ここには常楽寺といへる時宗の道場はべる。日中の勤め聴聞のためにまかりける時、大井川といへる所にて

 うち渡す 大井河原の みなかみに 山やあらしの 名をやどすらむ       (略)

 また、野寺といへる所、ここにもはべり。これも鐘の名所なりといふ。この鐘、いにしへ国の乱れによりて、土の底に埋みけるとなむ。そのまま堀り出さざりければ、
 
 音に聞く 野寺をとへば 跡ふりて こたふる鐘も なき夕べかな

 このあたりに野火止といへる塚ありけり。「けふはな焼きそ」と詠ぜしによりて、烽火たちまちに焼け止りけるとなむ。それよりこの塚を野火止と名付けけるよし。国の人の申しければ、

 わか草の つまもこもらぬ 冬されに やがてもかかる 野火止の塚

 これを過ぎて、膝折といへる里に市はべり。しばらく仮屋にやすみて、例の俳諧を詠じて、同行に語り侍る。

 商人は いかで立つらむ 膝折の 市に脚気を うるにぞありける
                                     『日記紀行集 全』有朋堂、1929年(ただし、表記は改めた)

 「野火止」のみならず、「野寺の鐘」も業平伝説のひとつ。 

 武蔵野の 野寺の鐘の声聞けば 遠近人ぞ 道いそぐらん

 膝折では、准后自身を悩ます「脚気」に、売り物の「脚気」を掛けたもの。
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