物語学の森 Blog版 池田亀鑑『悲しく美しい 安養尼のお話』、池田芙蓉『嵯峨の月』
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このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。
池田亀鑑『悲しく美しい 安養尼のお話』、池田芙蓉『嵯峨の月』
 都内で打ち合わせの後、早稲田の図書館で、貴重書となっている『少女の友』を閲覧。大正8年(1919)から昭和6年(1931)まで、池田亀鑑は、大正ひとけた時代の初期には『少女の友』、大正昭和の中期には『日本少年』『婦人世界』(この時期は主筆として実業之日本社に入社)、昭和に入っての後期には『馬賊の唄』を中心に『日本少年』を発表媒体として100作近い小説を書き下ろしています。長野嘗一( 「小説家・池田亀鑑(その一、二、三)」『学苑』昭和女子大学光葉会、218.219.221号、1958年5月、1958年6月、1958年8月)によると、『安養尼のお話』が第一作とされていますが、下田歌子、長谷川時雨、林芙美子等の著名な作家に混じって、12巻(1919)あたりから、作品の傾向ごとにペンネームを使い分けていたようです。
 
 時はちょうど高等師範から東大の学生、副手時代にあたり、筆一本で生活と研究を支えていたことになります。昭和6年で創作の筆を折っていますが、見事、『源氏物語』の諸本探索に全国を駆け回り始めた『校異源氏物語』第一期の初年、これを期に研究に全力を傾注したことが分かります。

 さて『安養尼のお話』は12巻8号、9号に連載された作品で、後醍醐天皇の皇女瓊子内親王ゆかりの寺、鳥取県米子市にある安養寺を舞台とした話で、前書きに『太平記』『増鏡』に取材した旨が記されてある美文調の佳作。

 『嵯峨の月』は12巻11号。『平家物語』や能に取材した「小督(こごう)」の話で、美しい音楽の物語となっていました。清盛を暴君と描く時代性もさりながら、いずれも女主人公が剃髪するという悲しい結末となっていることも特筆されます。

 ちなみに冒険活劇『馬賊の唄』は、白蓮の義父で「大陸浪人」宮崎滔天作詞の歌がモチーフとなっている由。これも大陸に進出しようとした当時の日本人の時代性を反映しています。




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2015-02-22 Sun 08:12
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