物語学の森 Blog版 池田亀鑑「輿謝野晶子といふ人」
池田亀鑑「輿謝野晶子といふ人」
2014-09-06 Sat 06:34
 昨日記した輿謝野晶子の倒れる前日、池田亀鑑に贈った短歌を書き留めておきます。

  昭和十五年の五月五日、わたくしは急な用事で荻窪のお宅をたずねた。用件をすませたあとで、例のやうに源氏物語のことを語りあつたが、その後、夫人は記念として、二枚の色紙をわたくしのために書いて渡された。その色紙には、

 須磨の山藤もさくらも幼なけれ
    京の流人の去年うゑしごと
 花見れば大宮のへのこひしきと
    源氏にかける須磨ざくらさく

 と二首の歌が美しく書いてあつた。
  夫人は、その翌六日、突然脳溢血で倒れ、一時小康をえたが、つひに再び立つにいたらず逝かれた。
   (昭和二十五年七月一日、東大文學部研究室にて)(竹臺高校記念誌「むらさき」二五・一〇)『花を折る』所収。

 手許にある、渡邊澄子『女性作家評伝シリーズ 与謝野晶子』を読み返してみたところ、その後も詠歌はしていたようです。不自由な手で短冊に代表的な詠歌を認め、金尾文淵堂に売りさばきを依頼したともありました。戦争で食べるものもない時代にも関わらず、病床にあってこのあたりの事情を省みる余裕はなかったようで、版元は療養費の工面のつもりで買い取ったようです。ただし、近代短歌界では、俵万智『サラダ記念日』、石川啄木『一握の砂・悲しき玩具』、与謝野晶子『みだれ髪』、がセールストップ3だそうで、『源氏物語』の三度の現代語訳、旺盛な評論活動、経済力のない夫を抱えての家計のやりくり、文化学院の創設等、傑出した才能と突破力は特筆すべきことであること、このことは疑えません。

與謝野晶子 (女性作家評伝シリーズ 2)與謝野晶子 (女性作家評伝シリーズ 2)
(1998/10/12)
渡辺 澄子

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