物語学の森 Blog版 2017年05月01日
物語学の森 Blog版
このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。
『枕草子』「有明の月」の定義。
『枕草子』
  月は、有明の、東の山際に、細くて出づるほど、いとあはれなり。<集成・第二百三十五段>

 「有明の月」は陰暦16日以降の月の謂で、必ずしも明け方過ぎ、日の出以後である必要はなく、「夜深き有明の月」なる表現も存在する。ところが、辞書的には、

  陰暦十六夜以後の月。夜が明けても、なお天に残っている月。ありあけ。ありあけの月夜。『日本国語大辞典第二版』

とあるように、「夜明け」に月が残っているのは必須要件と書かれている。ところが、先の『枕草子』の用例は、「東の山際」だから、朝に月が登らなければならない。以下、『枕草子』に適合する「有明の月」の月出入、日の出の時間を示す。

│ 2015 月出(方位) 月入(方位) 月齢 日出(方位)-旧暦換算)10月│
│10 7 (旧暦8 25) │0:35(93) 13:41(264)│ 23.8│5:55 (95) │
│12 8 (旧暦8 26) │1:37(98) 14:14(260)│ 24.8│556 (96) │
│12 9 (旧暦8 27) │2:24(79) 15:31(279)│ 25.8│5:57 (96) │
│ 2016 月出(方位 月入(方位) 月齢 日出(方位) -旧暦換算)9月│
│926 (旧暦8 26) │1:37 (88) 14:02 (270 )│24.4│5:48 (91) │
│927 (旧暦8 27) │2:31 (92) 14:34 (265)│16.9│5:49 (91) │
│928 (旧暦8 28) │3:25 (97) 15:05 (261)│17.9│5:49 (92) │

 となると、小林賢章氏『「暁」の謎を解く-平安人の時間表現』角川選書、2013年が引用する
 顕昭『顕秘抄』
 「いさよふ月」
 下旬をばおしなべて有明、おほかた十四十五日より月のいらぬさきに、夜のあくるをばみなありあけの月といふべかりけれど、くはしくいへば二十日の後をいふべき也
 
 と、「夜明け」を必須要件とせずに、陰暦下旬の「月」をいうものと解するのが穏当な見解となる。


2017-05-01 Mon 06:56
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