物語学の森 Blog版

このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。

『湖月抄』の300年

 先日、書庫から掘り出した雑誌の一つに『国語展望』53巻(尚学図書、1979年11月)がありました。

〈座談会〉「源氏物語」をめぐって/阿部秋生・小町谷照彦・野村精一・柳井滋

同社から刊行された『鑑賞 日本の古典』の第一回配本『源氏物語』の校注・執筆者の座談会。刊行から37年、三人が鬼籍に入られており、戦後の源氏学をリードした先学の貴重な証言となっています。座談会冒頭「『源氏物語』との出会い」は、『源氏物語』をどの本で読んだか、誰に習ったかが自己紹介的に述べられています。参加者の年齢順に並べてまとめてみます。

○阿部秋生(1910-1999) 有川武彦『増註源氏物語湖月抄』昭和3年(1928) /旧制第一高校/山岸徳平
○野村精一(1929-) 猪熊夏樹『訂正増註源氏物語』大阪積善館、明治23.24年(1890.1891) 旧制第一高校/阿部秋生
○柳井滋(1930-2008) 吉澤義則『対校源氏物語新釈』平凡社、1937年-1939年 /旧制第一高校
○小町谷照彦(1936-2014) 池田亀鑑『日本古典全書 源氏物語』朝日新聞社、1949-1954年/伊那北高校/代田敬一郎

これにくわえて、
○塚本哲三『源氏物語』有朋堂文庫・大正14年(1914)
○正宗敦夫編纂校訂『源氏物語』日本古典全集刊行会・1937年
○金子元臣『定本源氏物語新解』明治書院、1925-1930年/『湖月抄』本文に河内本(耕雲本)を校合

等の叢書が参照されていたようです。また野村先生の発言の中に、藤岡作太郎( 1870-1910)も積善館版『湖月抄』で読んでいたとの証言もありました。

 谷崎潤一郎(1986-1965)の旧訳も『湖月抄』を底本に『対校源氏物語新釈』を参照したことが知られており、アーサー・ウェイリー(Arthur Waley /1889-1966)の読んだ『源氏物語』の本文もまた『湖月抄』。

 先の座談会でも阿部発言に、「いつごろまでかはよくわからないけれども(昭和)三十数年ぐらいまでは『湖月抄』で行ったんじゃないかな。というのは『校異源氏』はできたけれども、比べてみると、『源氏物語』とあんまり違ってないじゃないか(笑)青表紙本は」

  北村季吟(1625-1705)の『源氏物語湖月抄』(1673年)は、江戸から昭和の『源氏物語』約300年を語る際に、欠かせないテクストのようです。



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俄古着屋「則天去私」の時代

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 若いときは、今から思えば顔から火が出るような恥ずかしいことをで平気でしているもの。俄古着屋「則天去私」時代(1985年秋)の写真が出てきました。有島武郎のファッションを卒論にするという友人がなぜか古着屋をやると言い出して、短期間店を開いたことがありました。

 学部時代、同じ下宿に住んでいた経営学部の友人が、熊本の玉名にいるはずなのですが、卒業から30年、名前もおぼろげだったので、書庫から埃まみれのアルバムを引っ張り出して見たところ、これらの写真が出てきました。学術系資料も掘り当てましたが、それはまたいずれ紹介します。

 年賀状のやりとりもある友人もいますが、ボクを除き、メンバー三人はそれぞれの地元に帰って中学校教員、大学事務局長・常務理事。要職にある彼もツイッターでやはり友人を案じていました。
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通読『細雪』

 科研の報告原稿が滞っているものの、気になる場面を探して谷崎の『細雪』を捲り返していたところ、結局通読してしまいました。市川映画版の改編と原作の場面が頭の中でごっちゃになっていたので、結構な時間と労力を費やしたものの、自分なりに整理することはできました。

 原稿のほうはもうすこしお時間を頂きます。
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西村亨先生の新刊




  『源氏物語』には複数作者説がありますが、その代表格なのが西村亨先生。その先生の御本が装いも新たに刊行の運びになったようです。刊行に際し、すこしばかりお手伝いさせていただきました。口絵の折口信夫の写真は学界未発表、先生御自身の撮影。文化人・池田弥三郎を知らない若い人達は、ぜひ手にとって読んで頂きたく思います。
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中村義雄「挿絵雑感」より

 中村義雄先生の古典挿絵について、池田弥三郎『光源氏の一生』を捲りなおしてみたところ、クレジットがありませんでした。ご自身により、1973年時点での回想があるので一部引用します。
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 萩谷朴教授の『紫式部日記全注釈』下巻がいよいよ刊行される。
『土佐日記全注釈』に引き続き、このたびも挿絵の一部を描いた者として、「挿絵雑感」とでもいうことで、ふだん感じていることを二、三述べてみたい。これまでにも『枕草子絵巻』の全図模写をはじめ、古語辞典や広辞苑、高等学校古典教科書、谷崎潤一郎氏の『新々訳源氏物語』の月報連載の絵巻模写など、いろいろな絵を描いてみて、ずいぶん勉強になった。挿絵といってもこれらはいずれも資料として、絵巻、冊子絵、屏風絵、工芸調度、建築などの線描きを主とした模写がほとんどである。これに対して、萩谷教授の上記三冊の場合は、大部分が考証想定図であるところが全く違っており、それだけにむずかしい仕事であった。今日のいわゆるイラストとしては、八年ほど前に池田弥三郎氏の著『光源氏の一生』に五図ほど描いたことがある。

中村義雄「挿絵雑感」 「月報」18 『紫式部日記全注釈』角川書店、1973年
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 先生のお仕事については以前も記した記憶があります。中村先生は、若き日、古筆学の小松茂美氏と服部有恒のもとで古典画を学んだとのことで、角川賞記念の学内講演でも板書を用いられ、引目鉤鼻の男性貴族を女性貴族に変身させた技藝に圧倒されたことを思い出します。時々、話の展開次第で真似をして引目鉤鼻顔を描いてみますが、一度だけ「上手です」と講義の終わり際にわざわざ誉めてくれた女子学生があり、中村先生のことを思い出しました。『人物で読む源氏物語』でも奥様にお願いしてたくさん図版を使わせていただきました。先生の古典挿絵集も自分なりにまとめておきたいと思います。

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根津神社のツツジ




 弥生美術館の特別展示「谷崎潤一郎の着物を見る」。市川崑監督の映画『細雪』の着物のヒジュアルイメージが強く、モデルとなった人たちの衣裳で時代を学ぶ。『新々訳源氏物語』の挿し絵は、安田靫彦ら当代一流の日本画家に交じって中村義雄先生も数点描いておられ、その一点が展示されていました。池田亀鑑『全講枕草子』「枕草子絵巻」(至文堂、1957年)の復原描き下ろし、池田弥三郎『光源氏の一生』(講談社現代新書、 1964年)にも中村先生の挿し絵が数点使われています。また、谷崎『新々訳』初版の月報九巻目に、中村義雄「王朝貴族の一生」があります。それにしても、このWikk項目は、やたら詳しく 、ちと吃驚。また、何でも分かって有り難い。

 ここから10分との案内だったので根津神社へ。ここののツツジも満開でした。

 帰宅してから一冊本の中公文庫『細雪』の京都の櫻見物の場面を再読。幸子と貞之助の和歌は、巧拙はともあれ、絶妙なやりとりではありました。
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『源氏物語』本文の脱文は「若菜」上巻に集中している

  『源氏物語』の脱文約50例のデータベース化進行中。このうち、約半数が「若菜」上巻に集中。明融本、大島本と対校しつつ、なぜこの巻に脱文が集中しているのか、考えています。

 ただし、新編全集においては、ほぼ、脱文が補われた校訂本文となっており、読解に大きな支障が生じていたわけではありません。このことはご安心の程。
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池田芙蓉『つつじが丘』『少女の友』14巻5号(1921年)

  池田芙蓉『つつじが丘』『少女の友』14巻5号、実業の日本社、大正10(1921)年5月

 上野国館林の「つづじが岡」公園にまつわる、つつじ姫の哀しい人身御供の物語。城沼の水の國に身を投げた姫君の伝承は、徳川家康の時代、館林城主榊原康政(さかきばら やすまさ)の側室「お辻」投身の物語が派生したようです。

「ああ、つつじが丘、城沼、そこは詩の土地であり、涙の土地である。」池田芙蓉


 今ツツジが真っ盛りとの報道を目にしたので書き留めます。

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熊本・菊陽町図書館少女雑誌村崎修三コレクション

乙女のふろく 明治大正昭和の少女雑誌

 少年少女雑誌の挿し絵画家を目指した村崎修三氏のコレクションは、国立国会図書館の蔵書を凌ぐ、日本の寶。世界記憶遺産申請中とのことですが、今回の熊本地震は震源地に隣接し、菊陽町図書館も当面休館とのこと。関係者の無事を祈ります。


 
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委員会




学会の委員会。まだ櫻が咲き残り、ツツジが美しいお庭でした。
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