物語学の森 Blog版

このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。

『源氏物語』(1951年)



 谷崎潤一郎監修、池田亀鑑校閲。
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文献学の良いところ取り

 『複数化する源氏物語』を鞄に入れて読んでいます。『源氏物語』研究を志すみなさんにはぜひ読んでいただきたい論文が並んでいますが、執筆者のみなさんは、ともに自説の評価に満足していないジレンマも読みとれます。確かに、膨大なデータ収集と校合、そして整理に時間を傾けた論文をスルーされたり、あっさり良いどころ取りだけされたのは本意ではないかも知れません。そう言われれば、このわたくしも該当するか…。なかには馬耳東風で、研究史を無視する方もあるようですが、この本の執筆者は多く誠実に研究史に向き合って真っ向勝負を挑んでおられるところに価値があると思います。

 今回は言及がないけれども、徳川・五島本『源氏物語絵巻』を論ずる際に、現行校訂青表紙本文で論ずるのは、そもそも本文が違うので、やはり詞書と、それに近接する保坂本を底本にする必要があるでしょう。これが現在のところ、最も根本的な問題になってきたと思います。
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『複数化する源氏物語 新時代の源氏学7』

 『複数化する源氏物語 新時代の源氏学7

 編者、執筆者から拝領。本文研究の現在が展望されています。ありがとうございます。
 なかでも大島本「関屋」巻本文が、大正本との親近性が高いことを指摘した上で、大島本53帖もまた、複数の親本から転写した巻巻を揃いとした取り合わせ本であることを指摘した佐々木論文は必読。こうなると定家本4帖、明融臨模本のない巻の定家本『源氏物語』を考えることは、ほとんど不可能と言うことになります。公刊されたばかりの自説をどのように修訂して次回の本に収めるのかを考えて、眼前の原稿や校閲の手が止まりました。

 この巻には飛鳥井雅康の奥書があることから、他の巻も同筆として、京都文化博物館の展示では、今でも飛鳥井雅康「自筆」とキャプションにあります。その発信源であるとされるのが池田亀鑑ですが、その認定は揺れていたことが以下の文章で分かります。池田亀鑑「佐渡と源氏物語」「歌と評論」17巻2号、歌と評論社、昭和21年10月1日を再掲すると、「桐壺」「夢浮橋」巻を除く現存51帖すべてを「自筆」とは、考えていなかったようですが、今日では池田亀鑑が雅康自筆であると認めたとする説が定着してしまった模様。
 
一体青表紙本の証本となるべき古写本は一帖二帖といつた残缺本として多少残つてゐるが、まとまつては傳はつていはゐない。雅康の写した本は、多少別筆かと思はれるものがないではないが、もし別筆があるとしても雅康と同時代の筆写にかかるもので、青表紙の一傳本を祖本として転写したものであることは、今詳しく説明する暇はないが、疑ひの余地はない。ともかくこの本は青表紙本の研究のために缺くことの出來ない貴重な資料である。校異源氏物語でも、底本にはこの本が選ばれたことを特に申しておきたい。
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堀辰雄の面会拒否

 


 堀辰雄の書斎は、堀の死の一週間前に完成したと言うことで、本人は蔵書を並べてくつろぐこともなかったとあります。『万葉集』などの日本の古典が目立つのは、彼の作品からも納得できます。堀の古典への造詣は、昭和13年、室生犀星から釈迢空の別荘を探す指示を受け、折口信夫の別荘で古典の講義を受けるようになってからのようです。二人はかなり懇意になったようで、室生犀星の『我が愛する詩人の伝記』で堀辰雄が折口の面会を拒否したことが、記されてあります。なんとも微妙な表現です。

病で床の中にいた時分、釈迢空が見舞いに軽井沢から来られる日に、彼は何を遠慮したのか、今日は起きられないと先生に言ってくれ、僕は起きないからと奥さんのたえ子に言った。だってそんなに元気なのにどうしてお会いにならないのですと言うと、訳はいわないで寝たきりだと言ってくれと、会わなかったのだ。(略)釈迢空は堀辰雄に好意をもっていたし、好意は非公式の愛情をも潜めていたものらしい、堀もそれをうすうす知っていたから、おとろえた姿をこの人の眼に見せたくなかったのだろう。


参考
堀辰雄と折口信夫
20080504 堀辰雄の書斎
20140905 池田亀鑑と『徒然草』
20140920 戦前の女性文学者と『むらさき』、そして折口信夫
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堀辰雄文学記念館



 信濃追分にある堀辰雄文学記念館へ。北陸新幹線開通記念ということで、金沢の文豪、室生犀星のお孫さんの講演がありました。写真は藤の美しい堀辰雄邸と書斎。
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庭に花咲く


 週末は信州。庭は春の花が満開。気温も23度で快適です。
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『源氏物語の方法を考える ―史実の回路』

 昨年の秋に書いていた論文が公刊されました。
考えるシリーズⅡ②知の挑発 源氏物語の方法を考える―史実の回路』武蔵野書院、5月刊。
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『源氏物語』前史 ─登場人物年齢一覧作成の可能性─ 田坂憲二
『源氏物語』の時代構造  秋澤  亙
桐壺帝をめぐる「風景」 ─『源氏物語』ひとつの状況として─ 横井 孝
一世源氏としての光源氏の結婚 ─『河海抄』の注記から見えてくるもの─ 栗山元子
女御の父の地位 ─『源氏物語』の女御観─ 松 岡 智 之
「輝く日の宮」巻の存否 ─欠巻Xの発表時期─ 斎藤正昭
少女巻の朱雀院行幸 浅尾広良
六条院と蓬莱 ─庭園と漢詩をめぐって─ 袴田光康
『源氏物語』朱雀帝の承香殿女御の死  春日美穂
〈新たな姫君〉としての宇治中の君  辻和 良
宇治十帖の執筆契機 ─繰り返される意図─ 久下裕利
『源氏物語』の方法的特質 ─『河海抄』「准拠」を手がかりに─ 廣田 收
大島本『源氏物語』本文注釈学と音楽史 上原作和 
平安時代の親王任官について  安田政彦
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ぜひ御高架をお願いします。
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冷泉家時雨亭叢書『源氏物語 柏木 河海抄 巻第十五 後陽成天皇源氏物語講釈聞書』

  冷泉家時雨亭叢書『源氏物語 柏木 河海抄 巻第十五 後陽成天皇源氏物語講釈聞書』 

もちろん未見。そのまま伝来した本なら青表紙本系なのでしょうが、巻末本文「ゐいさりなと」以下の存否が最大の関心。あれば別本となるからです。

この君はゐいさりなと」
したまふさまのいふよしもなうをかしけなれは人めのみにもあらすまことにいとかなし。おもひきこえたまひてつねにいたきもてあそびきこえ給。                 -各筆源氏、保坂本、伝源三位頼政筆本、穂久迩文庫本。


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飯島本『源氏物語』「藤袴」巻の本文系統。

 先日の報告に刺激されたので、飯島本の「藤袴」巻をつぶさに調査。解説では「別本」と分類してあり、大沢本ともども、この巻には「別本」の存在が知られていなかったところ、この十年の間で二本が加えられたことになります。
 最新の加藤校本では「青表紙本」として校合されているので、見解の異なるところ。飯島本には、巻末には二項目の、いわゆる「第一次・奥入」があり、形態論的には青表紙本の性格を有しています。本文の性格は、分類に値する決定的な異同と言うより、書写を繰り返す中での経年的な本文転化と言い得るものであると言う位置づけが出来るようです。

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学習院大学藏「藤袴」巻零本。

 学習院で物語研究会例会。榊原家本『源氏物語』のツレと思しき「藤袴」巻零本の報告。多くの知見を得ました。本文研究、翻刻はすでに学内学会機関誌に掲載されています。詳しくはこちらを参照されたし。
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