物語学の森 Blog版 2015年03月
野寺探訪
2015-03-31 Tue 06:30



 我が家から、南西2.99㌔、週に数度通勤に利用していた武野(たけしの)通りを自転車で向かう。我が家周辺と同じ地形で、西に大きな崖があり、その通り道の坂を下ると経営する幼稚園。そして満行寺の伽藍が並びます。
 事前にお電話を差し上げて、『新編武蔵野国風土記稿』所引の「寺記」を見せて頂こうと思っていましたが、廃仏毀釈で寺が荒れ、再興してから三代目の現時点で、寺に文献は残っておらず、平成になってから設置したという山門の前の案内プレートのみが寺の歴史を語るものであると言う(リンク先参照)。ただし、故伊藤嘉夫先生揮毫の、擬・業平歌の歌碑がありました(逆光に自身が映り込んでいます。再チャレンジ予定)。




 向かいは、八幡太郎義家ゆかりの武野神社。ここにも妙音沢と同じく谷底となるところに湧き水があり、弁天社では子供達が、網で魚取り遊びをしていました。帰りは遠回りして大泉学園の桜通りで所用を済ませて帰宅。汗ばみました。
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『新編武蔵野風土記稿』と出典未詳和歌
2015-03-30 Mon 08:01
  「野寺の鐘」「にいざの民話」には、業平と紀貫之とされる古歌が紹介されています。

 武蔵野の 野寺の鐘の 声聞けば 遠近(おちこち)人ぞ 道いそぐらん  (在原業平)
 はるばると 思いてもやれ 武蔵野の  ほりかねの井に 野寺あるてう   (紀貫之)

 「古典ライブラリー」の語彙検索を二日間、あれこれとしてみましたがみつかりません。
 ところが、関連語とされる「ほりがねの井」については『枕草子』の「井は」の筆頭にあげられていることに気づました。そこで注釈書を紐解いてみると、萩谷先生の『解環』によって、『磐斎抄』には、これを川越の地名としていること、さらに金子『評釈』が先の貫之詠を紹介していることを指摘しつつ、現存『貫之集』にこの詠歌が見えないことから再調査をした経過を記しています。その結果、金子説の根拠が、『大日本地名辞書』の引く『新記』なる文献に拠ったことを突き止めたのでした。そこで、旧稿を廃棄して他に典拠を求め、『集成』以降は『古今和歌六帖』の以下の詠を同時代和歌として挙げています。

 武蔵なる ほりかねの井の 底を浅み 思ふ心を 何に喩へむ

 また、この「掘りかねの井」については、「井戸を掘りかねて流れを堰とめただけの井堰」三巻(497-8頁)と規定していました。

 これを踏まえて、さらに今回調べてみたところ、『新編武蔵国風土記稿』(1809-1824年)「新座郡」「満行寺」に、

 武蔵野ノ野寺ノ鐘ノ声聞ケバ遠近人ゾ道イソグラン コレ在原業平天長三年(826)ノ詠ナリトイヘドモ寺記の外他ノ所見モナケレバイカゞアラン
 又世ノ歌仙三十六人ノ集ニ云モノアリコレモ後人ノテニナリシモノニテ信用シガタシとト云 ソノ貫之集ニ野寺ノ鐘ヲ詠ミシアレバ始クコゝニ記 ハル/\ト思イテモヤレ武蔵野ノホリカネノ井ニ野寺アルテウ コノ鐘亡失セシト云ヘルモ古ノ事ニヤ 文明ノ比ハ早此鐘ナカリケリト見エテ廻国雑記ニ云 野寺ト云ヘル所コゝニモ侍リ(略)

 とありました。江戸後期には二つの和歌の作者が以上のように伝えられていたと言うことでしょう。ちなみに業平は天長二年生(824-880)、数え二歳の詠歌ということになります。

『枕草子』
 井は、ほりかねの井。玉の井。
 はしり井は、逢坂なるがをかしきなり。
   山の井。などさしもあさきためしになりはじめけむ。
 飛鳥井は、「みもひもさむし」とほめたるこそをかしけれ。
  千貫(ちぬき)の井。少将井。さくら井。后町の井。


 
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表参道で源氏物語
2015-03-29 Sun 08:12



 表参道の銕仙会で『源氏物語』若紫巻。よみうりカルチャー経由で招待券を頂きました。能の舞台で金田一春彦の復原した平安時代の「若紫」を聞く。音便なし、破裂音が多用されていた当時の発音は中村義雄先生の講義で聴かせていただいた記憶が蘇りました。
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『廻国雑記』の武蔵野『伊勢物語』伝承。
2015-03-28 Sat 06:59
 道興准后の『廻国雑記』によれば、少なくとも四回武蔵野に立ち寄ったことになっています。ここにはおなじみの地名と伝承が記されてあり、15、16世紀のこの地の文化を窺うことが出来ます。ともあれ、『伊勢物語』伝承もまた、文明19年( 1487)五月頃の、かなり早いときのものであることは特筆されるでしょう。

 河越といへる所にいたり、最勝院といふ山伏の所に一両夜宿りて、
 
 限りあれば けふ分つくす 武蔵野の さかひもしろき 河越の里

ここには常楽寺といへる時宗の道場はべる。日中の勤め聴聞のためにまかりける時、大井川といへる所にて

 うち渡す 大井河原の みなかみに 山やあらしの 名をやどすらむ       (略)

 また、野寺といへる所、ここにもはべり。これも鐘の名所なりといふ。この鐘、いにしへ国の乱れによりて、土の底に埋みけるとなむ。そのまま堀り出さざりければ、
 
 音に聞く 野寺をとへば 跡ふりて こたふる鐘も なき夕べかな

 このあたりに野火止といへる塚ありけり。「けふはな焼きそ」と詠ぜしによりて、烽火たちまちに焼け止りけるとなむ。それよりこの塚を野火止と名付けけるよし。国の人の申しければ、

 わか草の つまもこもらぬ 冬されに やがてもかかる 野火止の塚

 これを過ぎて、膝折といへる里に市はべり。しばらく仮屋にやすみて、例の俳諧を詠じて、同行に語り侍る。

 商人は いかで立つらむ 膝折の 市に脚気を うるにぞありける
                                     『日記紀行集 全』有朋堂、1929年(ただし、表記は改めた)

 「野火止」のみならず、「野寺の鐘」も業平伝説のひとつ。 

 武蔵野の 野寺の鐘の声聞けば 遠近人ぞ 道いそぐらん

 膝折では、准后自身を悩ます「脚気」に、売り物の「脚気」を掛けたもの。
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まだ開花せず
2015-03-27 Fri 06:02



 妙音沢の桜を見に行きましたが、まだ蕾で一輪を確認したのみ。昨年、テレビでも話題となった旗桜は囲いとプレートが設置されていました。散歩がてら、毎日通います。




 前日、打ち合わせの後、頂きました。もちろん、頗る美味でありました。ありがとうございました。
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落陽南北
2015-03-25 Wed 05:18



 所用で信州に帰省。左は、八ヶ岳方面、天気がよいと富士山も見えることもあります。右は浅間山。気温は東京と比べて7.8度違うようです。まだ梅もちらほちら。桜は二週間後くらいか。
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仏教的なるものの意味。
2015-03-22 Sun 08:16
 日大で物語研究会例会。企画が関心を呼んだのか、驚くほどの参加者がありました。以前、60人越えだった例会がっあたので記憶を頼りにデータを調べてみたら、95年12月の明治大学和泉キャンパスの203回例会でした。執筆者を増やして一冊の本にしても良いような内容の濃いものであったと思います。

拾遺和歌集論攷 (研究叢書)拾遺和歌集論攷 (研究叢書)
(2015/03/20)
中 周子

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 中周子先生より頂きました。歌合関係から読み始めました。ありがとうごさいます。『拾遺集』の編纂意図に、花山院の「見果てぬ夢」を読む重厚な論集です。
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長勝院の旗桜、そして道興准后
2015-03-21 Sat 07:36
 公開講座を終える。『伊勢物語』と武蔵野の話をしたところ、出席者の生徒さんから、道興准后の和歌が残されていることを教えていただきました。

 志木市柏町に残る長勝院後の旗桜は、平安末期の貴族で田面郡司・藤原長勝の柏城跡とされています。そして、なんとここは、郡名からも明らかなように、『伊勢物語』武蔵野章段の「入間の郡、三芳の里」に登場する母を藤原氏とする娘の家のモデルとされてきたようです。さらに「野火止」の娘もこの長勝の娘という伝承になっていました。

 新座郡(にいくらごおり)にちなんで、室町時代の聖護院門跡・道興准后(1430-1527)がこの地を訪れ、その折りに詠んだ和歌も残されているようです。 『廻国雑記

 わか草の つまも籠もらぬ 冬されに やがても かかる野火止の塚 (国歌大観・私家集大成未収)

 「田面沢村」は川越市に編入され、駅名も存在したようですが廃止され、現在はJR西川越駅となっているとのことだから、当時は「三芳野村」(現・坂戸市)とともにこの村を『伊勢物語』の里だと考えていたようです。一冊書けそうですね。

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税金に詳しくなろう。
2015-03-20 Fri 08:16
 居住地の固定資産税問題が揺れています。ボクの家は計算違いの年以降に移住したため、該当しませんが、8億円近くの還付金となり補正予算を組んだという。中には計算違いの高い固定資産税延滞のために自宅を失った方もあり、このことはテレビでも報道されました。

 そこで、市税条例を確認したところ、減免措置を申請したのに却下されたこともあって支払った法人税はやはり払わずに済むとしか読めない条文でした。

 教訓・税金には詳しく神経質になりましょう。
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『枕草子』講座12回終了。
2015-03-19 Thu 07:24
 「入門」を掲げて『枕草子』講座12回終了。120分の12回だからほぼ大学の半期分。おおよそ、『枕草子』全体を把握できるように考えたつもりです。講座内容の紹介文は以下の通りでした。だいぶ資料も溜まったので、いずれ、大学でも通年で講義をしてみたいと思っています。
内容 『枕草子』は、『源氏物語』と並び称される、日本が世界に誇る古典です。宮廷女房として中宮定子に仕えた清少納言の美意識や感性、あるいは悲哀。縦横に語られることばの世界を読み解きます。
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