物語学の森 Blog版

このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。

『折口信夫芸能史講義 池田弥三郎ノート』


折口信夫芸能史講義 戦後篇 上:池田彌三郎ノート折口信夫芸能史講義 戦後篇 上:池田彌三郎ノート
(2015/02/21)
折口 信夫、池田 彌三郎 他

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 アベーテはるひ野でうち合わせ。あわせて新刊も頂きました。ありがとうございました。
 なお、池田弥三郎の卒業論文は『宇津保物語』だった由。ただし、折口の「藝能史」講義には、唐物の楽器・七絃琴は出てきません。これは自身の課題としたいと思います。



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武蔵野各地の名の由来

 公開講座のための準備。比企郡滑川町にある東上線の駅名「つきのわ」は、もともとは京都の地名で、ここは清少納言隠棲の地。武蔵野の場合も、月輪殿・九条兼実の荘園があった由ですが、これは日曜日に専門家にお話が伺えそうです。

 新座市の古刹・平林寺のあたり、野火止は、業平伝説に由来することも、必ず触れねばならない話。

 むかし、をとこありけり。ひとのむすめをぬすみて、武蔵野へ率て行くほどに、ぬす人なりければ、国の守にからめられにけり。女をば草むらのなかにおきて、逃げにけり。道来る人、「この野はぬす人あなり」とて、火つけむとす。女、わびて、
 武蔵野は けふはな焼きそ 若草の つまもこもれり 我もこもれり
とよみけるをきゝて、女をばとりて、ともに率ていにけり。              定家本『伊勢物語』12段

 それに三芳野と「昔男」の話

  昔、男武蔵の国までまどひありきけり。さて、その国に在る女をよばひけり。 父はこと人にあわせむといひけるを、母なむあてなる人に心つけたりける。 父はなほ人にて、母なむ藤原なりける。さてなむあてなる人にと思ひける。 このむこがねによみておこせたりける。住む所なむ入間の郡みよし野の里なりける。
  みよし野の たのむの雁も ひたぶるに 君が方にぞ よると鳴くなる
むこがね返し、
  わが方によると鳴くなるみよし野のたのむの雁をいつか忘れむ
となむ。
 人の国にても、猶かかることなむやまざりける。           定家本『伊勢物語』十段


 予習中です。
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公開講座・古典に見る武蔵野・埼玉 3月20日(金)13時~15時

 よみうりカルチャー大宮で公開講座「古典に見る武蔵野・埼玉」を開催します。ボクは古代・平安時代の武蔵野を中心にお話します。

 平安・鎌倉時代の古典文学には武蔵野にまつわる話が多くあります。『伊勢物語』の「入間郡みよし野の里」の女の婿取りの話、清少納言が隠棲した「月の輪」にちなむ武蔵嵐山、月輪の地名、また、『平家物語』には、熊谷直実、畠山重忠を始めとする武蔵武士の活躍ぶりが、そして、『発心集』には川越の風景と武士の暮らしぶりがそれぞれ描かれています。
 これらの古典文学を手がかりに武蔵野を文学・歴史の立場から概説します。


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日記の類纂化と「竹取物語」カテゴリー化。

  『小右記』の実資は、小野宮流筆頭の有職として知られ、43年も右大将を勤めています。故実にも精通していたため、後一条天皇の御代になると、「自分が正当な朝儀の執行者であり、それが後世の先例となるべきであるという意図で日記が書かれた」とも言えるらしい。時には、儀式次第を参照するため、日記関係部分の転写を依頼されたこともあり、「部類」を作成して対処しようとしていたようです。原資料である暦に書いた日記の他に、目録も存在するのは、参照しやすくするための工夫であろうと思われます。また、このような「部類」の作成は、『土佐日記』や『紫式部日記』の原資料となった「具注暦」を復原した萩谷先生の基礎研究がありました。そして、「部類」化は、『枕草子』の類纂本系の存在や、『紫式部日記』の複雑な成立過程にも参照すべき「史実」であることは間違いありません。現在のかな日記文学が、原資料なくしていきなり冒頭から書かれたと思っている人は居ないとは思いますが、そうしたことに考えが及んでいるとは思えない論文も時折見かけます。

 そこで、このブログも「竹取物語」カテゴリーを立ててみました。人からよく「多作派」だと言われ、確かに自分でもいつどこでそのことを考えていたのか分からなくなることがあります。「部類」化は自分の研究の経緯が分かって復習しやすい。実資さん、ありがとう。
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八十助の柏木

 亡くなった三津五郎さん。1976年、NHKの少年ドラマシリーズ『怪傑 黒頭巾』、映画では『Mishima』内の作中劇『金閣寺』の柏木。なんと言ってもインパクトがありました。後者は本に付録のかたちのDVDで見られるようになったようですから、ぜひどうぞ。

三島由紀夫と一九七〇年三島由紀夫と一九七〇年
(2010/11)
鈴木 邦男

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池田亀鑑『悲しく美しい 安養尼のお話』、池田芙蓉『嵯峨の月』

 都内で打ち合わせの後、早稲田の図書館で、貴重書となっている『少女の友』を閲覧。大正8年(1919)から昭和6年(1931)まで、池田亀鑑は、大正ひとけた時代の初期には『少女の友』、大正昭和の中期には『日本少年』『婦人世界』(この時期は主筆として実業之日本社に入社)、昭和に入っての後期には『馬賊の唄』を中心に『日本少年』を発表媒体として100作近い小説を書き下ろしています。長野嘗一( 「小説家・池田亀鑑(その一、二、三)」『学苑』昭和女子大学光葉会、218.219.221号、1958年5月、1958年6月、1958年8月)によると、『安養尼のお話』が第一作とされていますが、下田歌子、長谷川時雨、林芙美子等の著名な作家に混じって、12巻(1919)あたりから、作品の傾向ごとにペンネームを使い分けていたようです。
 
 時はちょうど高等師範から東大の学生、副手時代にあたり、筆一本で生活と研究を支えていたことになります。昭和6年で創作の筆を折っていますが、見事、『源氏物語』の諸本探索に全国を駆け回り始めた『校異源氏物語』第一期の初年、これを期に研究に全力を傾注したことが分かります。

 さて『安養尼のお話』は12巻8号、9号に連載された作品で、後醍醐天皇の皇女瓊子内親王ゆかりの寺、鳥取県米子市にある安養寺を舞台とした話で、前書きに『太平記』『増鏡』に取材した旨が記されてある美文調の佳作。

 『嵯峨の月』は12巻11号。『平家物語』や能に取材した「小督(こごう)」の話で、美しい音楽の物語となっていました。清盛を暴君と描く時代性もさりながら、いずれも女主人公が剃髪するという悲しい結末となっていることも特筆されます。

 ちなみに冒険活劇『馬賊の唄』は、白蓮の義父で「大陸浪人」宮崎滔天作詞の歌がモチーフとなっている由。これも大陸に進出しようとした当時の日本人の時代性を反映しています。




高畠華宵作「日本少年」表紙、山内日出男少年と愛馬西風。

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『竹取物語』の「王とおぼしき人」は阿弥陀如来か。

 東大本『竹取物語絵巻』には、不死薬を翁夫婦に手渡す天人が描かれていますが、これを「王」と認定するには躊躇されます。国立国会図書館本の天人に服装の違なる天人いますが、これを「王」の含意とする事を除けば、それ以外の 『竹取物語絵巻』諸本を眺めても、天人の中の「王と思しき人」は描かれていません。近時公開された映像作品にははっきりと阿弥陀如来が迎えに来たことになっているようです。
 そもそも、阿弥陀如来が菩薩達(極楽浄土で修行する人々)を引き連れてやってきた構図と物語本文の重なるところがあることは認められるでしょう。天人達「百人ばかり」が「五尺ばかり上がりたるほどに立ち連ね」ている描写は、二世紀後の阿弥陀来迎図を先取りしているとも言え、往生者を迎えに聖衆が下りて来た場面を想起させるからです。阿弥陀如来に従い、楽器を奏で舞い踊る菩薩たちが、「百人ばかり」に相当します。本来、仏教においては、さまざまな修行方法で悟りを開き、仏になる方法を説く。その一つに阿弥陀如来が極楽浄土に衆生を救い取り、苦しみのない場所、修行に専念できる極楽浄土で衆生が仏になれると説くのが浄土教の教え。
 ただし、『竹取物語』の世界観にある不老不死は道教的思惟であり、仏教的な魂の救済のみではありません。天人が地上を「汚きところ」と規定したのは「穢れ」観そのものであり、その浄罪は、祓えと結びつく「神」観念に由来します。
 このことは、三橋正さんの規定した神祇信仰、日本的宗教構造成立の第二段階、貞観弘仁期の思想史的背景と見事に符合します。したがって、男性的言辞を弄する「王とおぼしき人」とは、天界の神でもあり、阿弥陀如来でもあるという、複合的な「カミホトケ」であると言えるでしょう。
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福家俊幸校注訳『更級日記全注釈』


日本古典評釈・全注釈叢書 更級日記全注釈日本古典評釈・全注釈叢書 更級日記全注釈
(2015/02/07)
福家 俊幸

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 著者から拝受。ありがとうございました。この叢書は恩師の著述も刊行後40年を経ていまだ読み継がれる超ロングセラー。古典研究者の為事、とどのつまり、死後も確実に残るのは註釈だけなのかもしれません。この春は、官人日記も勉強する予定ゆえ、御学恩に預かせていただきます。
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桐壺前史諸説系図一覧

先帝図
 講座資料を作成しながら、『源氏物語の系譜学』を書き下ろそうと思い立ち、そのための基礎系譜を作成。誤りご指摘ください。
参考文献


源氏物語の史的回路―皇統回帰の物語と宇多天皇の時代源氏物語の史的回路―皇統回帰の物語と宇多天皇の時代
(2009/12)
袴田 光康

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源氏物語の准拠と系譜
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あのさー


  昨日のアクセス解析で、「上原+セクハラ」 の検索キーワードでやってきたSoftbankユーザーあり(笑)。頭に来たので、IPアドレスで閲覧履歴を逆探知しようと試みましたが、特にいかがわしいページに常駐なさっているような痕跡はありませんでした(笑)。検索するなら、「パワハラ被害」でお願いします。ただし、これも今日の記事以外はヒットしないでしょう。
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