物語学の森 Blog版

このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。

忘却の彼方へ。

 乱読二日目。論文を読んでいると、引用されている論文を読まないとわからないので、机には本が幾重にもなります。気がつくと、自分でも何か書いたような気がして、探してみると、しっかり書いてありました。忙し過ぎて何を書いたのか、忘れていたようです。それなりに頑張っています。これは出来るだけ早めにまとめておかないといけないというような気がしてきました

「主題」論の過去と現在 (テーマで読む源氏物語論 1)「主題」論の過去と現在 (テーマで読む源氏物語論 1)
(2008/10/28)
室伏 信助、 他

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乱読の週末。

 完全に予定がない週末、学会前後から先日頂いた本、買った本(計15冊!)を乱読。さらに付箋を付けながら精読。これだけ論文が並ぶと、80年代、90年代スタイルのタイムカプセル論文もちらほら。
 
 80年代、『源氏物語』の諸本研究は、原則として『源氏物語大成』。その後、渋谷先生の全文公開、古典総合研究所の検索機能も公開され、精密度は格段に高まりました。語彙検索をいちいち数え、そのページに当たるという、手作業が懐かしい。そして『別本集成』『河内本校異集成』で異文のリサーチも容易になりました。すべて高価な書籍ですが、大学図書館でもこれは可能。しかも、手前味噌ですが、行方不明とされていた阿仏尼本や大島本の浮舟巻の存在(ただし、補写本)も確認されたし、本文研究は急速に進捗した分野。ただし、その成果は本文研究者限定で、九割の論攷は叢書の校訂本文なのは嘆かわしい。
 いっぽう、七絃琴も、平安時代半ばには廃れたとする山田孝雄言説は、本文の精査から、奏法を熟知し、音色を聞かなければ書けないと再三にわたって指摘してるにもかかわらず、浸透は今ひとつ。

 研究の啓蒙は永続的に必要なことだと思います。

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反骨の中野好夫。


 議会のヤジ問題は、数の論理に対抗するならリコールしかないようです。ただし、埼玉都民のボクは隔靴掻痒。
 前回の都議会リコールは、議長選挙の収賄で逮捕者が出た1965年。そのリコールの代表が英文学者の中野好夫。大学教授では生活できないと東大を辞職した後、中央大学に奉職したり、ブレはありますが、太宰治の『如是我聞』での応酬など、高校生時代から、その著作には感化されたこともありました。文学と政治、もっと頑張っても良いような気がします。まずは自分の出来ることから。
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『新時代への源氏学』一期三冊。

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題塔提名

  森鷗外の『航西日記』の冒頭に、大学を卒業してドイツ留学をする直前の心境を詠んだ詩に「觀花僅覺歡事。 題塔誰誇最少年。」とあります。
これは、「雁塔题名[yàn tǎ tí míng] 」の四字熟語を引用したもので、「百度百科」によれば、

古代科举制度中,進士及第的代称。雁塔即大雁塔,在陕西西安的慈恩寺中。為唐玄奘所建。唐朝新中進士,均在大雁塔内提名。故以“雁塔题名”代称進士及第。

 とあり、「大雁塔」に合格者の名前を記すことが慣例であったことを踏まえた表現。大雁塔のある慈恩寺では同じく進士合格者を花宴に招いたと言うから、「観花」もこれにちなんだもののようです。必殺アイテム「Japan Knowlege」ではヒットせず、日本語文献ではなかなか拾えない熟語。たいしたもんだ!
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『竹取物語』のふるさと存疑

 『竹取物語』関連地図、いちおう擱筆。冒頭部の本文の揺れから、

  竹取翁の出自は、「さぬきのみやつこ」から、讃岐神社のある、大和国広瀬郡三吉郷とされます。

 ただし、本文は古活字本・新井本「さるき」、武藤本「さかき」でともに本文転化が前提となります。

 おなじく、かぐや姫の命名者「みむろといんべのあきた」は新井本では「みむろのあきた」で宇治の三室戸は確定できません。

 かぐや姫の家とされる「山本」。京都府京田辺市三山木の通称名「山本駅」周辺とされますが、
 
 新井本 「宮つこまろがいゑは山もちかんなり」古活字本、武藤本「宮つこまろがいゑは山もとちかん(う)なり」

 で山が近いことだけ。流布本によってのみ地名を考えることは再考の必要があることを書き留めておきます。
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穗積陳重著・穂積重行校訂『忌み名の研究』


忌み名の研究 (講談社学術文庫)忌み名の研究 (講談社学術文庫)
(1992/03)
穂積 陳重、穂積 重行 他

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 初版は『実名敬避俗研究』(1926)。忌み名習俗は我国固有のものではないとする本居宣長以来の定説に対し、法学者である著者(1855-1926)が多数の事例をあげて批判を試みた古典的名著。『源氏物語』に実名が出てくるのは、惟光に良清、『竹取物語』のかぐや姫、それに対して『うつほ物語』には実名らしき人物が登場。その原理をこの本で考えたことがありました。
 著者は、宇和島藩から上京、漱石鷗外に先駆けてロンドン、ベルリンに留学、我が国の法体系理論を確立。枢密院議長のまま逝去。ちなみに著者の弟・八束は明治17年(1884 )、鷗外森林太郎と同じ船でドイツに留学しています。
 
  校訂、解説を書いたのは、院生時代の母校の学長で著者の孫。東京教育大学廃校により、母校に移籍して来られたとのことで、「高坂の駅に降り立ったとき、オレも落ちたもんだと思った」と、書き記しておられました。実は、ボクも入学時、まったく同じ感想を持ったので、タクシーに乗せていただいたとき、その話をしたら、「今は立派でしょ」と仰ったので二人で笑いました。当時は受験生も右肩上がり、親しくする同窓後輩の語学の先生方もこの時期の入学になります。文庫版品切れのようですが、再度読み返すことにします。

 
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正義の味方の偽善性。

 都議会のヤジと身近な会のオレ様発言で思い出したことがあります。会の有力メンバーからもらった退会の弁。

「どういう立場、権限があるのか? 「○○は悪い、ゆえに○○を非難する自分は良い」、という完全にルサンチマンの構図でしょう。力のあるものには媚びへつらい、そうではない者は頭ごなしにいじめる、この卑屈な態度には我慢なりません。」

 理論派の読みだとこのように見えていたらしい。人間に失言や失敗のないものはない。ただし、行き過ぎは自重しないといけない。それを忠告してくれる人があるかどうかか、人生の分かれ道のような気がしてきました。だとすれば、このところの輿論もたんなる偽善になるおそれもあるような気がします。ただし、名告り出られないほどの卑屈な人間のようだから、下品な親父たちはサヨナラするしかないのでしょう。
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源氏絵入手




軸には「桐壺」とあれど、「若紫」の詞書が添えられていさる不思議な源氏絵を入手しました。あちこちいたんでいるところは目をつぶることとします。

 午後は、池袋の立教大学で物語研究会例会。ベテラン勢も揃って盛会でした。ただし、臨時に開いた総会で、事務局活動費の使途についての発議の際、濫用を防ぐためとはいえ、性悪説的な発言に度の過ぎたものがあったなあと帰りの電車の中で考えていました。座がしらけ、あの発言を聞いて愉快に思った人はひとりもいないはず。となると程度は違えど都議会のヤジに等しい。だいたい会費は会の運営に使うために徴収し、予算も通っているにもかかわらず、なるべく使わせないとはいかなる論理なのか、まったくワカリマセンでした。確認してみたところ、予備費が単年度経費の2倍ある。ただし、会員が漸減状態、シーリングは必要だけれども、万も超えない予算枠内で大幅な予算超過の提案をしたわけでもない。不思議であります。
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『竹取物語』の都とは。

 授業の配布資料作成。紙媒体ではなく、授業ページのホルダーにアップすれば、各自が印刷する仕組み。学生証に課金されているので、カラーで印刷したければ有料で。節約したい学生は、学生端末室で印刷すれば紙媒体も入手可能。
 ありがたい『絵入源氏物語』に『竹取物語関連地図』をひとまとめ。これを眺めていたら、当然、『竹取物語』の都は、登場人物のモデルが活躍した、大宝元年(701)当時の藤原京(持統天皇8年(694年)遷都)なのか、帝のモデルとされる文武・仁明天皇の時代の平安京なのか、と言う問題。三谷榮一『竹取物語評解 増訂版』(有精堂・1988年、初版1942年)では、藤原京を起点に「小倉山」も奈良を想定された地図が巻末に併載されています。
 『かぐや姫の物語』でも、都は平安京に設定されていたようですが、蔵人頭の存在は810年以降のことであり、藤原京では存在そのものがあり得ません。ただし、地理的には、宇治(三室戸)、奈良県広陵町(讃岐神社)、かぐや姫の家(京田辺市三木山)等を繋ぐラインが南都を志向しているような気もするのです。


かぐや姫の物語 (角川文庫)かぐや姫の物語 (角川文庫)
(2013/10/25)
「竹取物語」、 他

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