物語学の森 Blog版 2012年10月
物語学の森 Blog版
このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。
隣は何をするひとぞ。

 研究室のある本館の最上階には教職員ラウンジがあります。写真は西側方面、すでに日が傾いて、夕焼け模様。白い建物は、先日、理事長解任の激しい権力闘争の報道があったばかりのC大学。学部によっては都心回帰を模索しているという噂も聞こえてきます。その向こうには、ライバル校の体育系施設の全面移転が予定されている多摩テック跡。こちらは計画がずれ込みそうな気配。キャンバスからかなり遠いので、練習時間の確保が厳しいかもしれません。
 この春、学長が入学式で、
 「本学はいかなる思想、宗教からも自由な大学です」
 と紹介していたけれど、これは重要なこと。南東にアイボリーで統一されたキャンパスを構えるT大学は、いまだに、「物言えば唇寒し」の状況があるという。
 お隣は何をするひとぞ、  我は我とて明日もいきゆく。

2012-10-31 Wed 06:34
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かつての男子校大学の今

 朝から三コマ。そのあと、水道橋の大学病院で歯の治療。予約した時間まで余裕があったので、神保町の 神田古本祭り に顔を出してみました。お宝ザクザク。
『天理図書館善本叢書』が2000円なり。欠本を腕がちぎれんばかりの大人買い。かつて学会販売ですら一割引の某書店でこれらを求めていたM君のことを思い出しました。5000円以上から送料サービスとのことで研究室に送ることにする。 治療のあと、再び訪れたキャンバスはもうライトアップされていたのでした。 かつて男子校と揶揄された昔日の面影はなく、右の巨大図書館は、閲覧席すら箱根湯本の高級旅館の如し。15年後の大学氷河期も、後顧の憂いなしとはかくの如き大学を言うのでしょうか。

2012-10-29 Mon 19:45
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身の静好を得むと欲せば

 来月、琴学史の講演があるので、稽古中。心持ちに余裕がないと音色も澄んで来ません。

2012-10-26 Fri 11:12
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道風書『和漢朗詠集』
或者、小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを、ある人「御相伝、浮ける事には侍らじなれども四条大納言(966生)撰ばれたものを、道風(966没)書かん事、時代や違ひ侍らん。覚束なくこそ」と言ひければ、「さ候へばこそ、世にあり難き物には侍りけれ」とて、いよいよ秘蔵しけり。 

 社会人講座の『徒然草』がちょうど八八段に当たるところだったので、粘葉本『和漢朗詠集』の複製と、萩谷先生の「道風筆の『和漢朗詠集』」『おもっいきり侃々』河出書房新社、1990年の一節を紹介しました。古代學協会蔵の『紫式部日記絵詞』は、実は二葉目で、一葉目は、珍品道風筆の『和漢朗詠集』巻下、「晴」の詩と歌が貼られていると言う話題を枕にしたもの。
 ゼミ合宿の二日目は開館直後に京都文化博物館の地下で大島本『源氏物語』とこの『紫式部日記繪詞』を見せていただき、さらに陽明文庫で名和先生の解説で『類聚歌合』を見せていただくと言うのがお決まりのコース。今から思えば、なんと豪華な旅だったことでしょうか。学内の書道雑誌が初出のため、そのエピソードで締めくくられます。
 道風書『和漢朗詠集』は先日から話題の本文批判の「歴史的規準」からすれば、噴飯ものの紙屑と言うことになってしまいますが、添付されていた『紫式部日記繪詞』の本文は黒川本を遡る一等資料。まずは伝承筆写者の周辺から辿り返し、検証する必要がないわけではありません。
 また、巻頭の「本文解釈学断章」のとりわけ「本文学序説」は書誌と本文研究を志す方にはぜひ読んでいただきたい必読文献。S文庫のS氏も未読とのことだったので、お読みいただくよう要請したことがありました。

 これを読めばボクが『源氏物語』本文史、さらには「歴史的規準」の策定に拘る理由も分かっていただけるものと思います。

 『紫式部日記全注釈』「口絵」の「紫式部日記絵詞」断簡は、角田先生がまだお元気な時、先生から古代學協会に寄贈されました。今度展観されたらまた見に行きたいと思っています。


2012-10-23 Tue 14:34
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長澤みつ・山田吉郎・鈴木泰恵編『今こそよみたい近代短歌』
今こそよみたい近代短歌

鈴木さんから『今こそよみたい近代短歌』拝領。教科書でおなじみの歌人と代表的短歌を取り上げながら、簡潔に来歴と歌風を論じたもの。参考文献も至便。ぜひ、ご高架を。
 
長澤みつ・山田吉郎・鈴木泰恵編『今こそよみたい近代短歌』…の続きを読む
2012-10-22 Mon 12:35
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『松浦宮全注釈』
 『松浦宮全注釈』を読み返してみました。先生晩年の著作、それも白内障を抱えての校正となったため、複数の校閲者の手を経ています。そこで文法事項は現在通行の用語に改められたようです。
 ただし、昭和43年(1968)『角川文庫』執筆時代の先生御架蔵のテキストゆえ、例えば『国歌大観』は旧版を使用しました。そのため、歌番号がずれているうえ、散文テクストも所在を示す数字が何を意味しているのか、今となっては不明のものもあります。すでに品切れ再版なしの著作となっているものと思われますが、先生のご指示で一部の方にのみ差し上げた「正誤表」が出てきました。いずれPDF化して公開しましょう。
 

2012-10-19 Fri 12:15
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古典ライブラリー
 遅まきながら古典ライブラリーに加入しました。さっそく懸案の和歌を検索しておおよその目安が付けられたのでした。大いに活用させて頂きます。
2012-10-17 Wed 07:09
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論を醸造させること。
 『竹取物語』は念校了。新年度の教科書戦線には間に合いそうで安堵しています。難産だったこの企画、それゆえに注釈の精度も上がりました。また、フルカラー全18図初公開の絵巻の画質も、最新の撮影機材による撮り直しによって格段の進歩がある由、お楽しみに。

 さて、気になっていた論文を読んでびっくり。『竹取物語』の和歌が新古今歌人の詠歌に踏まえられておらず、後代になって物語に和歌が組み込まれたが故の不整合と言う論旨。あり得ない。
 
 定家の子・為家撰とされる『風葉和歌集』には『竹取物語』の和歌が採られているし、定家作とされる『松浦宮』には「竹取引用」が確実にあるからです。萩谷先生の『松浦宮全注釈』をお手伝いしたとき、前半に引用していた『竹取』の本文が奇怪だったのでお尋ねしたところ「下宿にあった日本女子大出身のアネキからもらった『栄華』と一緒になっているのを使ったんだよ」とバツが悪そうに仰ったのを思い出しました。

 とうほうの注釈も、恥ずかしながら、誤読ではなく、勘違いもありましたが、ほぼ共著者が消してくださいました。論をある程度寝かせ、醸造させることは大切なことだと学びました。
 

2012-10-15 Mon 12:59
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真贋の行方
  IPS細胞をめぐって、ふたりの研究者の顔が連日報道されています。山中さんはまったくの同年代で、奥さんのことを「普段は大阪のおばちゃんです」と答えるあたり、多くのシンパを得たものと思います。しかも、資金援助の要請も忘れず、経済的に不安定な若手の研究者の育成にも心を砕いているのは、学風がすでに確立しているからでしょう。
かたや、どうも、売り込み屋さんらしいひと、まことにあやしき気配。
今取り組んでいるテキストの奥書は二つとも後代の偽跋のようで、これはしっかり書き込ませてもらいました。ただし、そこには本物の鉱脈のある偽物です。かの大島本源氏物語の奥書もこれに同じことが言えるわけです。

2012-10-13 Sat 07:30
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藤本勝義『源氏物語表現と史実』
源氏物語の表現と史実源氏物語の表現と史実
(2012/10/17)
藤本 勝義

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 公私ともに御世話になるばかりの藤本先生から拝受。「あとがき」にあるとおり、多忙を極めた中でご執筆された、文字通り珠玉の論文集。ほんとうにありがとうございます。感謝しています。

2012-10-11 Thu 07:59
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