物語学の森 Blog版 2011年07月
物語学の森 Blog版
このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。
大島本『源氏物語』の校合書き入れの時期も確定。
 大島本『源氏物語』に見られる膨大な本文校合と書き入れは、やはり吉見正頼ならびに家令の祐筆の手になるものであるようです。
 大島本の書本を所持していた大内氏は、一条兼良筆良鎭所持の河内本を入手し、延徳二年には兼載に命じて『源氏物語青表紙定家流河内本分別条々』を作成させていました。ただし、これを書き入れたのは大内氏ではないようです。というのも、大島本の校合、註記の書き入れは、宮印本と他の飛鳥井雅康臨模本との合綴以後のことだからです。先日、このことを独自の検証作業によって証明することが出来ました(と自分では思います)。

 くわえて、一条兼良の息・良鎭からもたらされた『花鳥余情』を保有し得る唯一の人物は、吉見正頼をおいて他にありません。したがって、校合と書き入れは正頼および家令の手になるものであろうと言う結論に至りました。以下、校合、書き入れを時系列にしておきます。
 ○延徳二年(一四九〇)、大内政弘、一条兼良筆河内本入手。兼載に『源氏物語青表紙定家流河内本分別条々』作成させる
  「宮河」印本(宮川長房蔵本?)等、複数の転写本(臨模本)作成さる。
 ○永禄七年(一五六四)、吉見正頼、雅康臨模本五二帖に二帖を補綴。桐壷 聖護院道増/夢浮橋 道澄
 ○吉見正頼、本文校合、一条良鎮所持『花鳥余情』関連註釈もならびに、一条兼良『源氏物語之内不審条々』転記。

 その後、吉見直系滅亡の後、末裔の大野毛利家でこの大島本『源氏物語』は秘匿されていたものと思われます。この話は、すこしばかり書き記したとおりです。

 ようやく授業を終えました。まだ、校務が残っていますが、ともあれ、一息です。

2011-07-31 Sun 10:50
別窓 | 源氏物語の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
完全原稿目指して。
 『小右記』科研で出勤の諸氏と待ち合わせて、しゃぶしゃぶ食べ放題の店で暑気払い、そして決起大会。ボクの本の校閲をして下さる山岸さんに、「刊行予告」をお渡しして、事前調整。山岸さんは出版最大手の古典部門に在籍したフリーランスの編集者。頼りにしています。
 提出期限の気になるレポート、採点を横に、改稿、また改稿。昨年、引用されて批判された箇所も、もちろん丁寧に推敲。ところが、何と言うことはない、引用者の誤記が二箇所。これで「分かりにくい」と書かれてはボクも浮かばれない。しかも、査読論文。なんだ、査読の先生は原典当たりもしてないなんて。
ともあれ、かくもあれ、本格的な夏休みが待ち遠しく。

2011-07-27 Wed 13:17
別窓 | 源氏物語の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
近刊案内-10月刊行。
 近刊案内を用意して頂きました。鋭意執筆中です。予約して下さいね。
 写真は英国籍貿易商モディさんの暮らしていた当時の神戸オリエンタルホテル。昭和20年の空襲で焼失した建物ですが、ここに阿仏尼本が約15年間秘匿されており、池田亀鑑・松田武夫一向が、昭和五年、門前払いにあったと言う、『源氏物語』にも曰く付きのスポットです。

2011-07-25 Mon 09:15
別窓 | モディ | コメント:0 | トラックバック:0
鷹司家伝来『源氏物語絵巻』のこと。
四辻秀紀氏の「国宝源氏物語絵巻について」『国宝源氏物語絵巻』五島美術館、2010年は、五島本『源氏物語絵巻』の来歴について、貴重な示唆をしています。

鷹司家にとって大切な絵巻(上原註…春日権現験絵)の一部や模本が何故に尾張徳川家や阿波蜂須賀家にもたらされたのであろうか。天保七年(一八三六)鷹司政煕の娘定子が近衛基前の養女となり尾張徳川家十一代斉温に入輿、一方鷹司政煕の娘幷子が蜂須賀家従十二代の斉昌夫人に、鷹司政通の娘標子が蜂須賀家十三代斉裕子夫人となるなど、それぞれに深い婚姻関係にあり、その中で家の宝とも言うべき重宝が贈答されたと考えられる。
国宝『源氏物語絵巻』もまた、『春日権現験絵』と同様に五摂家の一つ鷹司家からそれぞれの大名家にもたらされた可能性を視野に含め考えてもよいように思われる。

明治維新に際して蜂須賀家の手を離れた五島本は、その後、古川躬行、蜷川式胤、柏木貨一朗と所蔵者を転々とし、明治末年には益田孝(鈍翁一八四八~一九三八)が入手、徳川本三巻の額面仕立てへの改装に準じて田中親美に額面に改めさせている。戦後に至り益田家を離れた五島本は、瀬津伊之助を経て高梨仁三郎、さらに五島慶太(一八八二~一九五九)の有となり、昭和三十五年(一九六〇)五島美術館の設立に伴ってこれに寄付され、今日に至っている。

 『源氏物語絵巻』が鷹司家に江戸末期まであったとすれば、これはこの絵巻の成立に深く関与していることを示唆しているように思われます。このことは新著に詳しく書くことにします。乞うご期待。
2011-07-24 Sun 09:16
別窓 | 源氏物語の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
『国文学 解釈と鑑賞』 8月号 平安朝文学史の輪郭
国文学 解釈と鑑賞 2011年 08月号 [雑誌]国文学 解釈と鑑賞 2011年 08月号 [雑誌]
(2011/07/12)
不明

商品詳細を見る


 編集のお手伝いをした一冊。期せずして『うつほ』が三本。最新の文学史を味読下さい。
2011-07-21 Thu 10:40
別窓 | 右書左琴の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
あと二週。


 履修者に造形芸術学部のデザイナー志望の人がいて、レポートに似顔絵を描いてくれました。若いな…。

2011-07-17 Sun 09:35
別窓 | 日記を物語る Blog 版 | コメント:0 | トラックバック:0
鉄道時計。



 セレモニーから二ヶ月。会長の御手跡で直接お送り頂きました。本物の家宝の誕生です。中西先生、ありがとうございました。
2011-07-15 Fri 20:32
別窓 | 生涯稽古の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
高木文、荷風に紀州家幕府献上品・古墨を贈る。『断腸亭日乗』より。
昭和三年二月九日
「快晴 日の光漸く春めきたり、正午日高君訪ひ来たり、改造社選集本の事につき同社社員と応答甚手数を要し面倒なりと言ふ、日高君是日高木文君より委託せらる、奈良古梅園の古墨にて往昔紀州家より幕府へ献上すべき名墨の中今日まで倉庫に保存せられしもの、去年紀州家宝物売立をなせし際高木君専らその事に鞅掌せられしかば、此等の名墨おのづから同君の有に帰したりしを割愛して余に贈られしなり。直に返書を裁してその厚情を謝す。」

昭和三年二月十五日

「空澄みわたりて日の光いよいよ春めきたり、過日高木氏の贈り来たりし古梅園献上の古墨を擦り試む、光沢漆の如く筆の穂ねばらず、誠に好き墨なり、高木氏依頼の短冊に句を書して返送す。」

 井伏鱒二に贈った「梅干」も、この頃のことかも知れません。

2011-07-11 Mon 18:32
別窓 | 右書左琴の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
炎暑の表参道ヒルズで。


 授業も最初の山場を越え、炎暑の表参道ヒルズで一休み。暑い、暑い!
2011-07-10 Sun 07:10
別窓 | 日記を物語る Blog 版 | コメント:0 | トラックバック:0
六草いちか著『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』
鴎外の恋 舞姫エリスの真実鴎外の恋 舞姫エリスの真実
(2011/03/09)
六草 いちか

商品詳細を見る


 先日、仲間内の出版記念会兼暑気払いがあり、ドイツ在住の先生からこの本の著者のお話が出ました。何人もの国文学者、日本の巨大メディアを以てしても到達できなかった難問を、クリアした歴史的なレポート。エリスの顔写真が残っていないのは残念ですが、これで決定版。「航西日記」「独逸日記」を読んでいたところなので、急遽、授業に加えて見ることにしました。
2011-07-09 Sat 06:36
別窓 | 生涯稽古の巻 | コメント:0 | トラックバック:0
| 物語学の森 Blog版 | NEXT