物語学の森 Blog版 右書左琴の巻
物語学の森 Blog版
このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。
后の宮と忠雅妻・六の君の物語- 『うつほ物語』 国譲・下巻より 
 日曜日の輪読会の準備中。

国譲・下巻
うつほ邸図  ゴチックは朱雀院、三条大宮・源正頼邸(六の君里下がり中)、三条京極邸(兼雅、仲忠邸)

  『うつほ物語』 国譲・下巻                    おうふう 787⑤
かく、后の宮、わが御族より始め、上達部・親王たちを、「憎し」と思したれば、むつましかるべきおとどたちも、かしこまりて参り給はず。かかれば、「なほ、心憂い世なり。これらが世になり果てぬるにこそはあめれ。かかることを見で、御髪下ろして、さりぬべからむ所に籠り居にしがな」と思せど、「ただ今は、心納めぬやうなり」と思す。
[朱雀院。]
かくて、太政大臣の北の方は、このことによりてこそ、宮の御婿取りもあべかりしか、今は音もなし。若君達は恋ひ泣き給ふ、御腹はゆくゆくと高くなる。何心もなく出で給ひて、秋の頃ほひ、夜寒に、心細きを、月ごろ離れ給ひて、心細く思す。おとども、夜ごとにおはしつつ泣きわび給へば、「いかがせむ」とて渡り給ひぬ。

2017-11-09 Thu 10:03
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漱石の蔵書


 雨の漱石山房記念館。写真にもとづき精巧に復原された書斎。重ねられた本も厚さを推定して作ったとのこと。やはり、東北大学所蔵の漱石の蔵書が気になるところ。充実した検索機能で和書『源氏物語 附 引歌並爪引』29冊もヒット。よく整備された記念館。ぜひ足をお運び下さい。
2017-10-17 Tue 07:31
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千野裕子著『女房たちの王朝物語論 -『うつほ物語』『源氏物語』『狭衣物語』』
 著者より『女房たちの王朝物語論 -『うつほ物語』『源氏物語』『狭衣物語』』を拝受。ありがとうござました。女房論に関しては、必要あって吉海直人さんや、野村倫子さんらの著作をあらあら読み返したところ。これら先行諸説も過不足なく取り込まれ、お得意の「系図」とも相待って、「女房」総体の物語史を語る見事な結晶体となっています。とりわけ、『狭衣』に比重が大きくなるのも、この物語を突き動かす原動力となっているのが「女房」だからなのだということを学びました。大塚ひかりさんの「「脇役」の「欲望」が物語を動かす。政治情報、男女の秘密、物語の過去……すべてを握って物語のゆくえを決めるのは主要人物に仕える「女房たち」だった。作者も多くは女房であった王朝物語への新しいアプローチ」なる帯文が本書の魅力と本質を見事に捉えています。みなさん、ぜひ、御高架をお願いします。

 千野さんにアシスタントをお願いした『マンガでわかる源氏物語』は、台湾語訳も出版され、発売5年後の今もamazonの『源氏物語』部門で10位前後をキープするロングセラーとなっています(2017年9月26日6時30分現在6位!)。こちらもよろしくお願いいたします。

千野裕子著『女房たちの王朝物語論 -『うつほ物語』『源氏物語』『狭衣物語』』…の続きを読む
2017-09-26 Tue 06:51
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『うつほ物語』から『うつほ草紙』へ(抄録)
うつほ草紙 小学館文庫、2003年3月
 
 今年は奇しくも『うつほ物語』再読の年。今抱えている原稿に加え、9月16日には青山学院女子短期大学同窓会講演「笑わぬかぐや姫と笑われる『うつほ物語』三奇人たち」、そして十数年ぶりの輪読会も担当予定。
 そこで十余年前の小文を読み返したところ、なかなか頑張っていました。以下、引用抄録。 

 巻末エッセイ 『うつほ物語』から『うつほ草紙』へ(抄録)

 さて、本書『うつほ草紙』は、主人公の名を清原俊華牙と言う。これに乳母子で琴職人の春音を伴い、遣唐副使として唐へ船出する。しかしそれは清原家を滅亡させんがための藤原氏の陰謀なのであった。嵐で難破し、海を漂う俊華牙と春音は、商人のセライ・ナジャ(後の馮若芳)に助けられ、波斯の都バグダードへ向かう。しかし彼は宮廷内の抗争に巻き込まれた上に、「愛別離苦」という木の呪いを受けて春音を喪い、傷心のまま、十三年の後、多くの宝物・文物とともに帰国を果たす。俊華牙は一女・細緒(原作には名は記されず、琴の名を転用)を儲け、四四歳の生涯を閉じる。遺された娘はあやにくな運命に翻弄'され、俊華牙を波斯国に追いやった藤原氏の嫡男・兼雅の子を宿す。運命の子の名、それが藤原仲忠であった。
 諏訪緑の物語世界は、代表作『玄奘西域記』にも一買して「少年の自分探しの物語」を主題とするようである。運命に翻弄される少年たちが、西方への旅を通して世界を知り、人を愛する切なさを知る。邂逅と離別を経験しつつ、自我に日覚めてゆく物語なのである。 このような読後の爽快感・清涼感をもたらしてくれる、現代に転生した『うつほ』の草紙を、もし清原氏の末裔である清少納言や、藤原氏の末裔である紫式部が読んだなら、「永遠の青春性」が主題のこの物語を何と評したことであろうか。

2017-08-11 Fri 06:50
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正倉院『種々薬帳』を学ぶ。
 正倉院『種々薬帳』を学ぶ必要があるようです。目録に60種、現存40種。以前から注目している、24.「五色龍歯」は、鎮静・鎮痙・鎮痛剤とした使用された「化石生薬」で、インドからの渡来品と目され、大小二個のうち、大きいものはほぼ完全な形のナウマン象の第三臼歯。他の薬物と配合したり、竜骨と同じように、『神農本草経』の薬効として「咳逆、泄痢膿血(膿血をともなう水様性下痢)」。内用としてはてんかん、神経症、不眠、寝汗、遺精に、外用としては皮膚の遺傷、分泌物の多い湿疹に対して使われたもの。

 『竹取物語』の求婚難題物は「ありそうでなさそうなもの」でありながら、インドわたりの珍品に想を得ていたものと私は考えています。

2017-07-23 Sun 06:23
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