物語学の森 Blog版

このBlogは、私が物語研究の途上で出会った様々な発見や、物語をともに学ぶ人々との出逢いを綴ったものです。ごらんのみなさんにも物語文学の深遠なる森の如き世界の一端をお知りいただければ幸いです。

久下裕利先生著『源氏物語の記憶-歴史との交差』

 久下先生より大著『源氏物語の記憶-歴史との交差』拝領。ありがとうございます。
 第一章は「『源氏物語』宇治十帖の記憶」。先日の報告に重なるところ多し。この報告は先生編の論集に掲載させていただきます。
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「夜深き暁月夜」の時間は午前4時(寅一つ)

平安時代の時間表現

 学習院で物語研究会例会。報告は恙なく修了。小林賢章氏の『「暁」の謎を解く―平安人の時間表現』角川選書の「午前3時=「夜明け=暁」説」を援用しつつ、『源氏物語』の「夜深き」「暁」を解読。ただし、「有明の月」は日付変更線を跨ぎ月の出からという修正案。なかに、源氏が朧月夜(有明の君)と逢瀬を重ねる「夜深き暁月夜」(「賢木」巻)という表現があり、質問を頂戴する。本文に「寅一つ(午前4時)」とあるので、この時点でも「夜深き」を用いていることが重要。この直前、二月に朧月夜が「尚侍」となる記述があるので春のこと。以下に2016年の如月有明の月のデータで検討すると、日の出が6時近いので、4時でも「夜深き」が用いられたのであろう。

 ここかしこ尋ねありきて、 「寅一つ」 と申すなり。
女君(朧月夜)、 「心からかたがた袖を濡らすかな 明くと教ふる声につけても」
 とのたまふさま、はかなだちて、いとをかし。
 「嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや  胸のあくべき時ぞともなく」
 静心なくて、出でたまひぬ。夜深き暁月夜の、えもいはず霧りわたれるに、いといたうやつれて、振る舞ひなしたまへるしも、似るものなき御ありさまにて、承香殿の御兄の藤少将、藤壺より出でて、月の少し隈ある立蔀のもとに立てりけるを、知らで過ぎたまひけむこそいとほしけれ。もどききこゆるやうもありなむかし。

2016 月出(方位) 月入(方位)  月齢 日出(方位)-旧暦換算3月
3月26日(旧暦2月20日)20:42 (103) 7:19 (258)  17.0 5:49 (86)
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論を立ててから先行文献を探す。

 土曜日の報告の資料は月曜日に準備完了。参考文献はいささクラシカルな論文が多い気がして、さらに先行研究をリサーチ。パワーポイントに追加します。「論文は読むな、論を立ててから先行文献を探すように」と萩谷先生に繰り返しご指導いただいたけれども、なかなか履行でなかったところ、今回はようやく実現の見通し。
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「上格子事」『侍中群要』第一「日中行事」

『侍中群要』第一「日中行事」
上格子事

式/凡 毎日辰一刻上格子/
令殿司女嬬御燈払拭殿上女蔵人検察之/
午一刻供朝膳/
酉一刻供夕膳 侍女房仰供奉 于黄昏殿司供燈楼下格子 或随仰下上格子亦同
○辰一刻(午前 七時)格子を上ぐ 
○牛一刻(午前十一時)朝膳
○酉一刻(午後十七時)夕膳
○黄昏(たそがれ)于(よ)り、燈楼を供し、格子を下ぐ 或は仰せに随ひて格子を下げ上ぐるも亦同じ
 ※殿司女嬬(女の童、にょじゅ)=後宮において内侍司に属し、掃除や燈火等の雑事に従事した女官

『紫式部日記』寛弘五年秋
まだ夜深きほどの月さし曇り、木の下をぐらきに、
 「御格子参りなばや。」 「女官は、今までさぶらはじ。」
「蔵人参れ。」
など言ひしろふほどに、後夜の鉦打ち驚かして、五壇の御修法の時始めつ。われもわれもと、うち上げたる伴僧の声々、遠く近く、聞きわたされたるほど、おどろおどろしく尊し。

『新編全集』
○「御格子参れ」-ここでは前に屋外の描写があるので、下ろす意
○「後夜」-六時(日没・初夜・中夜・後夜・晨朝・日中)のひとつで明け方の四時頃。

 時系列で見ると、前夜の黄昏には格子を下ろしており、翌朝辰一刻(午前七時)に上げるというのだから、「下ろす」ことは不可能と言うことになる。


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如月朔日と廿日あまりの『源氏物語』

 覚え書き。『源氏物語』の如月は、朔日と廿日に記事が集中していることに気付く。正編では、花宴、朱雀院行幸、続編では公務の谷間の宇治の物語となっている。データは渋谷先生の語彙索引より。 『新編全集』『新大系』の表記は「二月」

『花宴(明融臨模本)』 如月の二十日あまり、南殿の桜の宴せさせたま :4/92
『澪標(大島本)』 明くる年の如月に、春宮の御元服のことあり。十一になり :15/281
『少女(大島本)』如月の二十日あまり、朱雀院に行幸あり。花盛 :401/474
『若菜上(明融臨模本)』かくて、如月の十余日に、朱雀院の姫宮、六条院へ渡り :267/887
『若菜下(明融臨模本)』 殿上の賭弓、如月にとありしを過ぎて、三月はた御忌月なれ :8/762
『幻(大島本)』 如月になれば、花の木どもの盛りなるも、まだ :38/182
『椎本(大島本)』如月の二十日のほどに、兵部卿宮、初瀬に詣で :5/292
『早蕨(大島本)』如月の朔日ごろとあれば、ほど近くなるままに :43/159
『宿木(大島本)』如月の朔日ごろに、直物とかいふことに、権大 :566/710
          この如月には、水のすくなかりしかばよかりしなり :668/710
『浮舟(明融臨模本)』如月の十日のほどに、内裏に文作らせたまふと :292/657 「橘の小島」の条は「有明の月」
『蜻蛉(大島本)』いかでか聞かせたまひけむ。ただ、この如月ばかりより、訪れきこえたまふべし。御文 :214/462
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