物語学の森 Blog版 竹取物語
「かたちたくみ」の太氏書入本『竹取物語』
2017-09-25 Mon 06:36


twitterで『竹取物語』の本文研究の成果を呟いておられる@tktrlさん。以下のような問題点を指摘されています。さっそく東海大学桃園文庫蔵の転写本を開いてみたところ、やはり「(朱)かたち/匠」(本文8行目)。『かぐや姫と絵巻の世界』本文は、流布本により校訂したもの。南波浩『校異古本竹取物語』(ミネルバ書房、1953年-底本「新井本」)も、本文は「かぢ匠(20)」と校訂し、新井本、三手文庫本が「かたちたくみ」であったことが報告されています。
 
 頭注(20)「(かたちたくみ)(底本、三)「うちたくみ」(神、正)「かちたくみ」(諸本)諸本に従った」

『竹取物語』古本系統本文研究は吉川理吉(龍谷大学)、中川浩文(龍谷大学)、南波浩(同志社大学)と京都系の学問の感があったものの、現在は流布本一辺倒になっていることは周知の通り。修士論文指導の際、萩谷先生は「契沖の学問は、国学者の中でもっとも確かなもの」「南波先生は、学問も人物も本物の方」。中田校本に誤りがあることを申し上げると「中田さんは(お酒を)呑むからなあ」との仰せがあったことを、これを書きながら思い出しました。

中田氏の校異篇p36、「〇かちたくみ―かたちたくみ【似】」とあって、上原先生も「かちたくみ」(注:三手文庫本文「かたちたくみ」、かぐや姫と絵巻の世界p32)とされている。三手文庫本移写本の翻刻(吉川氏)を見ても「かたちたくみ」とある。これは首肯される

ところが、新井氏著の翻刻では「かたちたくみ」(本文篇p9)であり、南波氏翻刻も「かたちたくみ」(全書p83)、中田氏校本でも「*鍛冶―かたち(古本) 諸本により訂す」(古本竹取物語p7)とあり、中田氏の調査結果が矛盾している。校異篇のミスと判断したいが、原本影印の刊行が待ち遠しい

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同窓会講演会
2017-09-17 Sun 09:04


 青山学院女子短期大学同窓会国文学科会の講演会を終える。役員のみなさんにはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。
 井の頭線京王線と乗り継いで、日大文理学部で物語研究会例会に合評会の途中から参加。記憶のないくらいご無沙汰の同世代の友人が参加。浦島さんは二次会ですっかり人気者となっていました。
 吉祥寺からバスで帰宅途中、大泉学園北口付近で交通事故のため道路が塞がり、長時間停車。雨で視界が悪かったのか、ぶつかることが想定できない位置にふたつの車がありました。雨の中の事故処理、ご苦労様でした。
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『竹取物語』の「笑ひ」
2017-09-13 Wed 08:01
 『竹取物語』の「笑ひ」は以下の通り。流布本で4例。新井本で3例。①は安堵の笑み、②は冷笑、③は攻撃的な蔑笑で漢文訓読調。

鍛冶匠ら「この宮より賜はるべきなり」といふを聞きて、かぐや姫、暮るるままに思ひわびつる心地、笑ひさかえて、翁を呼びとりていふやう「まこと蓬莱の木かとこそ思ひつれ」

②「『大伴の大納言殿の人や、船にのりて、龍殺して、そが首の玉取れり』とや聞きし」と問はするに船人答へて云はく「あやしき事かな」と笑ひて「もはら、さるわざする船もなし」

③家にすこし残りたりける物を、龍の玉取らぬ者どもに賜びつ。これを聞きて、離れたまひし元の上は、腹を切りて笑ひたまふ。糸を葺かせ作りし屋は、鳶、烏の、巣にみな食ひ持て往にけり。

石上中納言貝をえ取らずなりにけるよりも、人の聞き渡らむ(流布本=笑はむ)ことを日にそへて思ひたまひければ、ただに病み死ぬるよりも、人聞きの恥ずかしくおぼえ給ふなりけり。

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東海大学桃園文庫太氏書入本「竹取物語」
2017-09-10 Sun 11:10

  三手文庫と並ぶ契沖校本の一本。1988年夏の調査。修士課程時代の書写にかかり、いずれ再調査予定。

 参考 國學院大學図書館武田祐吉旧蔵・平瀬本『竹取物語』(こちらも契沖校本のひとつ)
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伝後光厳院筆『竹取物語』断簡集成 -計 11枚リンク集
2017-09-08 Fri 09:22
生い立ち
 伝後光厳院筆『竹取物語切』については、拙著『かぐや姫と絵巻の世界』武蔵書院(178頁)で9枚、2016年に鶴見大学で開かれた「平安文学、どれが流布本?なにが異本?」展のパンフレットでも9枚となっていましたが、志香須賀文庫蔵の「蓬莱の玉の枝」三行が落ちていました。これにこの2月「かぐや姫の生い立ち」の一枚、高城氏所蔵の切の前段にあたる本文「(くらきところ)なくひ可利みち堂りお支那(きな)」が出現。いずれも新井本(古本系統)に近く、流布本とは対立する本文特性を保有しています。これでのべ11枚。心覚えに記します。

『竹取物語本文集成』 【未収録断簡】▼
1 個人蔵 伝承筆者未詳      ▼かぐや姫の生い立ち    
2 高城弘一氏蔵(伝後光厳院筆)    妻問い
3 毘沙門堂蔵(伝後光厳院筆)      火鼠の皮衣
4 志香須賀文庫蔵(伝後光厳院筆) ▼蓬莱の玉の枝
(久曽神昇編『物語古筆断簡集成』汲古書院、2002年)
5 加賀文庫蔵(伝二条為定筆)      龍の首の玉
6 志香須賀文庫蔵(伝後光厳院筆)  龍の首の玉
7 個人蔵(伝後光厳院筆)        燕の子安貝
8 南園文庫蔵(伝後光厳院筆)    御門の求婚
9 田中登氏蔵(伝後光厳院筆)     御門の求婚
10 田中登氏蔵(伝後光厳院筆)     御門の求婚
11 田中登氏蔵(伝後光厳院筆)   御門の求婚
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